圧倒的なユーザー数と利便性を誇る
「BtoBプラットフォーム受発注」

 飲食店の仕入業務をサポートするITサービスには「SEND」「Foodison」「八面六臂」などがあります。ただし、「SEND」は農畜産物生産者との取引に、「Foodison」は水産業者との取引に特化しており、飲食店の仕入全般をフォローするものではありません。語弊を畏れずにあえて言えば、「飲食店向けの食材ECサイト」という印象でしょうか。

 発注システムとして私が今回注目するのは、株式会社インフォマートが運営する「BtoBプラットフォーム受発注」です。

 98年創業のインフォマートも、当初は「フーズインフォマート」という売り手と買い手を結びつける「飲食店向けの食材ECサイト」のようなサービスをメインに行なっていました。それが、03年に「ASP受発注システム(現・BtoBプラットフォーム受発注)」のサービスをスタートさせてからはそちらの利用者が急激に増えて、現在では同社の売上の半分以上を占めるようになったそうです。(なお、売り手と買い手をマッチングするサービスは「BtoBプラットフォーム商談」というサービスに引き継がれています)。

 「BtoBプラットフォーム受発注」に注目する最大の理由は、同システムを使うことで、これまで紙で行なってきた取引のほぼすべてをデジタル化することが可能だからです。

 「BtoBプラットフォーム受発注」を導入している卸業者やメーカーは2017年4月末現在で3万2784、事業所は26万8789にも上ります。そのなかには青果、鮮魚、精肉、飲料、乾物、米・穀物、乳製品、調味料、加工食品といったあらゆる食材の業者はもちろん、割箸、洗剤、容器などの備品や資材を扱う業者も含まれています。飲食店の営業に必要な食材や備品は、よほど特殊なものでないかぎり、「BtoBプラットフォーム受発注」を使って取引することができるのです。取引可能な業者の数・内容ともに、国内では随一と言えるでしょう。

 インフォマートの大島大五郎営業本部長によれば、外食関連の卸業者のうち中堅以上の会社のほぼ100%が「BtoBプラットフォーム受発注」を導入しており、たいていの飲食店で仕入金額の90%以上を「BtoBプラットフォーム受発注」で取引できているそうです。

 ちなみに、飲食店(買い手)側の利用店舗数も4万3312店舗を超えており(2017年4月末)、こちらも圧倒的なトップシェアを誇っています。

 「BtoBプラットフォーム受発注」のもう1つの大きな強みは、これらの卸業者や飲食店がクラウドでリアルタイムに繋がっており、発注から納品までが一気通貫のデータで管理されている点です。飲食業界ならでは、その店ならではの発注手順を大きく変えることなく、発注から納品書、請求書の発行など面倒な伝票処理の部分をすべてデジタル化しているため、発注にまつわる非効率を大幅に削減することが可能になります。

 店舗の仕入業務のフローに沿って、具体的な機能を見ていきましょう。

 まず、システムの柱となる「発注機能」。飲食店では通常、在庫の食材は冷蔵庫や棚などにわけられて保管をされていますが、「BtoBプラットフォーム受発注」の発注画面では【冷蔵庫1】【冷蔵庫2】【食材倉庫1】【冷凍庫】など「棚(保管場所)ごと」に発注をかけることができます。また、【A青果店】【B物産】【C酒店】という「取引先ごと」や、その店独自に設定した「発注グループごと」に発注することも可能です。

「BtoBプラットフォーム受発注」の発注画面。発注画面では、各店舗発注担当者によってやりやすい検索方法にて発注をかけることができます。表示順・件数・詳細表示等、発注画面をカスタマイズすることも可能です。 拡大画像表示


 検品の際には、その日の「納品予定一覧表」を出力すれば、漏れなく正確に行なうことができます。

 検品が終わり、正しく納品がされていた場合は受領ボタンをクリックするだけで、取引は完了。仮に納品ミスがあったとしても、システム上で修正依頼をかければ、取引先がすぐに対応してくれます。赤伝票の送付と受領もシステム内で完結します。

 以上のような日々の取引の状況は、「取引カレンダー」を見れば一目瞭然。納品日を基準として「何社宛に発注をしたのか?」「そのうち何件が納品済で、何件が検品して受領書を送付済か?」などのことを一覧で確認できます。

「BtoBプラットフォーム受発注」の取引カレンダー画面。 拡大画像表示


 面倒な「棚卸」も、棚(保管場所)ごとの棚卸表を出力して確認をすればスムーズです。棚卸高の集計は、システム上に在庫数を入力するだけで日々の発注データをもとに自動的に行なってくれます。特に日々仕入れ価格が変動する生鮮品などは、自動的に最新の単価で計算をしてくれるので、精度の高い棚卸を実現できます。

 食材によっては「現物を見たうえで発注をかけたい」というものもあるかもしれません。その場合は、市場や取引先まで実際に足を運んで注文をしたうえで、納品書や請求書は「BtoBプラットフォーム受発注」経由で送付してもらえば、取引内容がシステム内に自動的に組み込まれます。さらに、取引先が「BtoBプラットフォーム受発注」を導入していない場合は、取引先や金額などを個別に手入力できます。

 まさに「すべての取引」をシステムに乗せて仕入管理することが可能なのです。

 このように、ITサービスの導入を検討する際、そのサービスが「飲食店の業務をしっかり理解したうえで作られているか」は重要なポイントになります。

 インフォマートの場合、「もともとは飲食店のことは詳しく知らなかった」(大島氏)そうです。では、なぜこれほどまでに飲食店の商習慣に寄り添った受発注システムを開発できたのかといえば、「システムの設計時に実際の外食企業からさまざまなアドバイスをもらったおかげ」(同)だといいます。