決算作業に要する日数が
1ヵ月から5日ほどに!
「MFクラウド会計」の導入および各業務システムの連携による効果は、すぐに現れました。月次の決算を行なうスピードが劇的に早くなったのです。
クラウド会計導入以前は、取引を月末に締めたあと、仕入先との請求書のやりとりからその確認作業、集計作業、入力作業などに1ヵ月近くかかり、月次の決算が確定するのは早くても翌月末あたりになっていました。従業員に還元するインセンティブの計算は月次決算確定後にしていたため、毎月末は必然的に時間的にも精神的にも逼迫した状態になってしまっていたのです。
それが、その月の仕入金額(原価)の確定は「BtoBプラットフォーム受発注」上で取引を締めた直後に確認でき、売上や原価、銀行口座やカード決済の取引明細など会計処理に必要なほぼすべての数字は自動的に会計ソフトに取り込まれるため、これまで膨大な時間を取られていた、月次決算のための取引先とのやりとりや入力作業がほとんどなくなり、取引を締めてから5日程度で決算が出せるようになったのです。
前田 「それまで1ヵ月間まるまるかかっていた月次決算が、5日程度でできるようになったのですから、その影響はかなり大きいですね。月次決算確定後のインセンティブの計算も余裕をもってできるようになり、精神的にだいぶラクになりました」
取材した時点では、導入して1年未満ということもあり、取引データの自動取得や自動仕訳に対する漠然とした不安感を完全には払しょくできていないため、システムと書類との照合作業を念のために行なっているというお話でした。また、クラウド会計につながっていない、一部の取引先の業務も残っています。そのため、「完全移行」にはまだ至っていませんでしたが、「近いうちには何とかすべての会計処理をクラウド会計でできるようにしたい」と前田さんはおっしゃいます。
会計業務の“効率化”は着々と進んでいるという印象を受けました。
前月の会計データの提示で
未来につながる議論を促す
以上は主にIT化による“効率化”の話でした。一方の“高度化”については、まだ具体的には形にできていないものの、次なる課題として前田さんの頭の中にイメージはあるようです。
前田 「現段階では、毎月決算が従業員のインセンティブを計算するためだけの作業になってしまっているので、今後は売上を伸ばしたり、原価を抑えるため――つまりは利益を生むための判断や行動に直結するようにしていきたいと思っています」
その一例として挙げてくれたのが、月一で実施している店長・料理長会議での会計データの活用です。
これまでは、月の取引を締めて、翌月末に決算が確定し、翌々月の会議にようやく数字が報告できるという状態でした。会議では2ヵ月前の営業実績をもとに、その後の店の運営やメニューの改定などの検討をしていたのです。
前田 「集まって話し合いはしていたものの、2ヵ月前の数字を見せられたところで、季節も変わりつつあるし、正直なところ、店長や料理長たちは『今さらそんな古い話をされても……』という気分があったと思います。実際、過去の反省をするだけで、その反省を現在や未来の店作りにつなげることができていませんでした。
しかし、クラウド会計を使えば、月末に締めて、翌月の会議には会計報告ができます。あるいは、日次決算だって可能になるでしょう。その時間短縮のインパクトはかなり大きいと言えます。なぜなら、『昨日の数字』を検証して、その改善策を『今日の営業』に活かすことができるからです。過去、現在、未来を有機的につなげて、機動性と長期的な視座の両方に立った店舗経営ができるようになるのではないでしょうか」
さらに、会計データの可視化は、店長や料理長クラスのみならず、現場の従業員一人一人の意識をも変える効果があります。
現場の従業員にとって、客数や売上、原価は日常的に触れることのできる数字ですが、それらを取りまとめた店全体、会社全体としての会計データはほとんど知る機会はありません。実際、前田さんの会社も「店舗ごとの成績としてのPL数値は店舗社員にも公開していますが、会社としての会計は完全にバックオフィスの業務なので、店舗を統括する本部の社員しか触れることはありません」といいます。