ネット社会の浸透の裏で
サイバー犯罪は、一大市場へと成長
それに呼応するように、サイバー脅威の状況も劇的に進化した。Kaspersky Labが創業した1997年当時、コンピューターウイルスは比較的珍しいものだった。マニアが研究目的や世間を騒がせるためのいたずら目的で作成しており、どれも比較的無害で実害が出るというより邪魔になるという程度の存在だった。その状況を変えたのが、1998年に発見された破壊力の強い「CIH」ウイルスだ。一部のケースでは感染システムの重要なシステム情報が書き換えられ、使いものにならなくなることもあった。被害額は10億ドルとも見積もられ、脅威の状況を根底から変容させたウイルスだった。
その後、セキュリティへの姿勢を変えさせた大規模なマルウェアの蔓延がいくつか発生している。2000年の「I Love You」ワームは、全世界で数百万台のコンピューターシステムに感染し、約100億ドルの被害を出した。2003年の「SQL Slammer」ワームは大規模なインターネット障害を引き起こした。
2000年代半ばにはさまざまなオンラインサービスが登場し、オンライン取引が急激に増えると、まったく新しいサイバー犯罪市場が成長を始めた。人々が電子商取引やオンラインバンキングシステムを利用するようになった途端、銀行の認証情報を狙うバンキング型トロイの木馬、各種のスパムやフィッシング詐欺が横行したのだ。サイバー犯罪はわずか数年で専門化、大規模化した。Kaspersky Labの推計では、2010年代初頭にサイバー犯罪に関わっていた犯罪者は全世界で数万人に及ぶ。こうした脅威に、一般ユーザーや小規模企業が日々、インターネットで直面している。