「ヒトサラ」導入店2 『吉次蟹蔵』
ヒトサラに出たことで、料理人のモチベーションが上がった

 ヒトサラを利用するもう1つのお店は、多くの人気店がひしめく中目黒に店を構える「吉次蟹蔵」さんです。
 鍋料理の専門店で、北海道紋別産の釣キンキを使ったしゃぶしゃぶや、北海道から毎日生きたまま直送される毛蟹を使った鍋がウリのお店です。ちなみに店名の「吉次(きちじ)」とは、キンキの宮城県での呼び名だそうです。
 まずは店舗概要をまとめましょう。

業態……鍋料理
席数……32席
営業時間……18:00~01:00 (L.O.00:30)/月曜定休
従業員数……固定で1名(繁忙時には、系列店から人を入れて最大で4名に)
客単価……8000円~1万円
系列……ほか11店

 「吉次蟹蔵」を含めたグループ直営12店舗のうち、食べログの有料サービスは全店で利用。ぐるなびへの掲載も、寿司業態の「鮨 つきうだ」1店をのぞいて、全店で行なっています。ぐるなびに掲載していない「鮨 つきうだ」は、その代わりに写真やデザインにこだわった自社ホームページを持っています。一方、ヒトサラへの掲載状況を見ると、居酒屋業態の「なかめのてっぺん 渋谷」と、「吉次蟹蔵」の2店のみと、かなり限定的です。

 なぜ店舗によって掲載するメディアをわけているのか。そこにはオーナーの内山正宏さんの明確な意図があります。

 20歳で料理人として飲食の世界に入り、ホテルや老舗料亭で修業を積んだ内山さんが、自身の会社である株式会社MUGENを立ち上げたのは33歳のとき。1号店は中目黒に出した「なかめのてっぺん本店」で、その後、渋谷、丸の内、横浜、品川に次々と出店していきました。

 グルメサイトは、当初からぐるなびを利用し、食べログの有料サービスもある時期から全店で利用するようになりました。

 独立以前、集客に苦戦していたお店でグルメサイトを利用したことで、お客様が来てくれるようになり、売上も伸ばせたという成功体験があったため、内山さんはグルメサイトの集客効果に一定の信頼は寄せていました。しかし、中目黒や渋谷などの飲食店激戦エリアに出店をしたことで、その効果の限界も感じるようになったそうです。

内山 「渋谷のような飲食店の数が多いエリアだと、ぐるなびに自店の情報を出してランキングを上げていったとしても、集客効果を実感できるのは一時だけ。たいていの場合は、膨大なお店情報の中に埋もれてしまっています。正直しんどいな、という思いはずっと抱いていました」

 ぐるなびや食べログとは違うかたちで、自店の情報をお客様に発信できないか?――そんな模索をしていたときに知ったのが、ヒトサラでした。
 最初は、何か特別な効果を期待して、というわけではありませんでした。

内山 「僕自身がもともと料理人だったとこともあり、料理はもちろん、料理人をフィーチャーしてくれる構成が面白いなと思って、試しに渋谷のお店で使ってみることにしたんです」

 ヒトサラに店舗情報が載るようになると、お店の従業員とお客様のそれぞれに変化が起こったそうです。
 
 お店側の変化は「料理人のモチベーションが上がったこと」です。
 ヒトサラの店舗ページには、プロのライターが料理人から引き出した料理や接客へのこだわりが文章としてまとめられ、丹精込めて作った料理もプロカメラマンの手によってシズル感ある美味しそうな写真として表現されています。

内山 「料理人には『自分のこだわりは、言葉ではなく、料理で伝える』みたいな人が多いのですが、それは反面、口下手で自分のこだわりを言語化できていないということでもあります。そんな今まで言いたくても言えなかったこだわりや思いをライターに引き出してもらい、あんなカッコいいページに仕上げてもらえれば、料理人だって当然モチベーションが上がりますよね。ほんとありがたいサービスだと思いました」

 サイトに顔写真やコメントが出ることで、料理人とお客様との距離感も変わり、会話がしやすくなる効果もあるようです。実際、ヒトサラに掲載後、料理人とお客様とが親しげに話している場面に、内山さんは何度か出くわしたといいます。

 一方、お客様側の変化は「客層が変わったこと」です。

内山 「ちゃんと集計したわけではないのですが、以前よりも30代以上のお客様が増えた感じがするんです。ヒトサラは30代以上のユーザー数が多いと聞いていましたが、そのユーザー層と新規の客層がリンクしているんだと思います」

 こうした渋谷店での経験があったからこそ、内山さんの中にグルメサイトに関する“新たな選択肢”が生まれたのだと思います。