これまで5回にわたって、日本的経営の特徴として、いまでも厳然と残っている「終身雇用制度」が、経営にどのような影響を及ぼしているかについて考えてきた。今回は、これまでの考察を踏まえて、まとめを行ってみよう。
終身雇用制度がもたらす
組織特性に対する意識が希薄
簡単にいうと、終身雇用とは人を採用してから、定年までその人を雇用し続ける制度である。今回の連載では、終身雇用制度を採用しているがゆえに形作られるさまざまな特性を、リーダーシップ、能力開発、動機付けなどについて考察してきた。
企業がある働き方をする一つの組織あるいは仕組みだとすれば、終身雇用のような企業の根幹を成す仕組みや価値観を持つと、ある特性、ある偏りを持った働きや動きをする装置になる。終身雇用を採用していない企業であれば、それは別の偏りを持った動きをする装置になる。例えば、同じ自動車でも、電気自動車とガソリン車では、外観や機能は似ているように見えても、その特性はいろいろな点で大きく違っている。これと同じようなことが、組織にも当てはまるだろう。
ある特性を持った環境のなかで、企業が繁栄していこうとすると、それぞれの偏りが、長所になったり、短所になったりする。終身雇用を採用していない組織でも、当然、その長所・短所はあるわけで、どのような環境にも適応できる万能の自動車があるわけではない。だから、終身雇用制度を組み込んでいる組織には、どのような長所と短所があるのかについて、日本の経営責任者は、もっともっと自覚を持つ必要がある。