また、次のような疑問も湧くかもしれません。
「読者を決めるなんて、何でそんな面倒なことをしなくちゃいけないの?」
「わざわざ1人に定めなくたって、始めから誰にでも伝わる文章を書けばいいじゃないか」
しかし、事実として、読者を「1人」にはっきり定めた私の記事は、多くの人に読まれることができました。なぜでしょうか。
私は、1人に向けて書けば、必ず多くの人に伝わると言いたいわけではありません。でも、最初から「みんな」に伝わる文章を書こうとすると、結果的に、誰にも伝わらない可能性が高いのです。
これには、理由があります。
たとえば、あなたが「30~40代男性に共感を得るような文章」を書こうとしているとしましょう。そこであなたは、30~40代男性の平均的な好みや属性を調べて素材を集め、30~40代男性全員に伝わるような文章を書こうとする。
おそらく、その文章は共感を得られない可能性が高いでしょう。
なぜなら「平均的な30代~40代男性」など1人もいないからです。
あなたの文章を読むのは、あくまで、個性を持った1人の個人です。
前回の「企画提案書」の例のように、事前に読む人がわかっていれば、どんな素材を用意すればいいか、何に重点を置いて書けばいいかが、はっきりと見えてきます。
それが、「みんな」に向けた文章を書こうとすると、暗闇の中でプレゼンしているのと同じような状態になります。読み手のイメージがぼやけているから、どんな素材をチョイスすればいいか確信が持てなくなるのです。
そうすると、書きながら「あれ、これは誰に向けて書いてるんだっけ?」「何を言えばいいんだっけ?」という迷いが生まれてしまう。
そうすると、書くスピードは急激に遅くなる。
さらに、結果的に誰にも伝わらない文章になってしまうのです。