官僚的な社風の新日鉄と、おっとりした社風の住金だが、結婚は祝福されている

 記者会見は、両社の社長による握手から始まった。

 2012年10月の合併を計画する新日本製鉄と住友金属工業は9月22日、新社名を「新日鉄住金」にすることや、合併後3年をメドに年間約1500億円規模の収益改善を目指すというアウトラインを発表し、将来の収益源を海外に見出す意向を打ち出した。

 新日鉄の宗岡正二社長が「総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカーを目指す」と力強く切り出せば、住金の友野宏社長は「“これはすごくよいことになるぞ”というのが僕の実感だ」と受けてみせた。

 単純合算で、世界シェア2位の巨大鉄鋼メーカーが誕生する再編劇とあって、産業界には“祝福ムード”が漂っている。両社の社長に笑顔が絶えなかったのは、自動車メーカーや電機メーカーなどの大口顧客からさしたる反発がなく、合併計画そのものに疑念を呈している需要家も少ないからだ。

 残るは、公正取引委員会による合併審査の判断と、米国や中国などの規制当局の承認待ちとなった。41年前に八幡製鉄と富士製鉄の合併で新日鉄が誕生した際には、一部の事業を手放さざるをえなかったが、競争の環境も市場の範囲もガラリと変わった現在では認められる公算が大きい。

 もっとも、結婚後は、生産設備の統廃合を含む大変な合併作業が待っている。03年に川崎製鉄と日本鋼管が合併した国内2位のJFEスチールは、東西にある製鉄所を地域単位で管理する運営手法で先行する。一方で、新日鉄と住金は、需要が伸びる新興国を中心とした海外で食べていくことを前提に置く。日本の産業界、とりわけメーカーにとっては、“試金石の一つ”となる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

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