ここ100年くらいで、私たちの食生活は大きく変化した。その結果として、さまざまな生活習慣病が生まれ私たちを苦しめている。私たちの体を蝕む元凶とは何か? 20万人以上の臨床経験と、生化学×最新医療データ×統計データから、医学的エビデンスに基づいた本当に正しい食事法をまとめた牧田善二氏の新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』から、内容の一部を特別公開する。

ホモ・サピエンスの食事はDNAに忠実だった
――生きるために組み込まれた本来のプログラムを見直す

 私の患者さんは、自分の飼い猫に甘いパンを与えていました。猫が喜んで食べるからです。ところが、その猫は糖尿病にかかって早死にしてしまいました。

 これがペットの犬や猫ならば、飼い主のせいでそうなったのであり、自分たちには防ぎようもありません。しかし、人間ならば自分で判断し、食べていいものいけないものを選び取っていかねばなりません。

 そのためには、とにかく「本来あるべき姿」に立ち返ることです。人間に限ったことではなく、ネコもイヌも他の野生動物も、最初の一頭が出現した時点で完璧につくりあげられています。脳における空腹感や満腹感の感じ方、消化や吸収、代謝の仕組みなどが最初からでき上がっており、そのとおりに生きるようにプログラムされているのです。

 アフリカでホモ・サピエンスが誕生したのは、いまから約20万年前と言われています。そこから、地球のあちこちに生きる場所を探して移動していきます。一部が東アジアへと進出し、やがて日本列島にも人類が住むようになったと考えられています。

 旧石器時代を経て縄文時代を迎えると、日本列島の人々は住居を持って定住するようになります。魚を釣ったり、イノシシやシカ、ツキノワグマなどの動物を捕獲することもあったでしょうが、多くはドングリ、トチの実、クリ、クルミといったナッツ類を貯蔵しておき、土器で煮炊きして食べていたと思われます。また、ワラビやゼンマイといった山菜類も食べたでしょう。海岸ぞいに暮らしていた人なら海藻類も食べたはずです。

 これら野生の植物には良質のタンパクやビタミン、ミネラルが豊富に含まれており、生き延びるのに必要な栄養分は確保できたのでしょう。当時は現代よりもはるかに厳しい環境だったはずですが、その中で生き延びてきた祖先たちの食生活は、与えられたDNAに十分にそぐうものだったというわけです。