「震災は、クラスを換えるためのきっかけを与えてくれました。しかし、きっかけを与えてくれても、クラスを変更するための資源がなかったケースでは、変化を起こすことは難しいのです」(若島氏)

 例えば、子どもが毎朝、なかなか起きてこない。母親は、何とか起こそうというクラスの中で、あらゆる手段をとるだろう。その限りにおいては、何も変わらない。

 窓を開けたり、布団をはがしたり、蹴飛ばしたり、違う方法をとっているように見えても、実はクラスが同じ。そのうち、いろいろな外部の人が関わっても、増幅されるだけで、解決しない。

 では、クラスを換えるとは、どういうことか。若島氏は言う。

「引きこもりの人に添い寝して、起こそうとしないことです。“いいから、いいから、寝てなさい”って、本人に言う。多くのセラピーの人は、自分がなぜ起きられないのか、自覚していないからダメだと思っている。我々は、なぜ?には興味ありません。何が起こっているのか?に注目しています。自分が出られない理由を探って、いくら深くなぜを追究しても、自分が出られない説明をすることと、実際に出られることとは、ほぼ無関係なんです」

 前出のケースも同じだ。プライドが高いからとか、何かが起こったからとか、いろいろな原因を突き詰めていって、本人が自覚しても出られない。

「何が起こっているのかというと、本人が家の中で、できることをやっていない。すると、自分の役割は必要ないんだと思って、存在意義を見いだせなくなるのです。問題は、あなたではなくて、私たち。“だから助けて”と頭を下げられるかどうかです。家族や周囲が、引きこもりの人をいつもと同じように弱い立場に置いたのか。あるいは対等に頼ったのか。その違いは、とても大きいのです」

 若島氏によれば、当事者に「この食糧配給の列に並んでくれないか」とお願いする。そう言って、親は別の店の列に並ぶ。そういうことができれば、いつもと違う役割を与えられていると感じることができるという。

 こういう役割分担ができなければ、せっかく震災によって、いつもよりコミュニケーションの機会が増えても、生活が元の状態に近くなればなるほど、あるいは仮設住宅に入ったとしても同様に、同じクラスの中では元に戻るだけなのだ。

震災後、引きこもりになった人も
だが、草むしりによってクレーマーの心を変える

 一方、元々働いていて、震災後に引きこもりになったケースもある。

 震災後、仕事を失って、仮設住宅に入ってから、家から出なくなってしまった人だ。

 若島氏は、同居している両親に、こう伝えるようにアドバイスした。