脱コモディティ化のために買収する
RBM買収を何より効果的に活用する方法の1つが、コモディティ化への対応である。HBR誌で以前述べたように、コモディティ化の力学は予測可能なパターンをたどる傾向がある(注)。
時が経つにつれて、独占的で統合された製品もモジュール化され、差別性を失ったものに変わることで、バリューチェーンのなかで最も収益性の高いポイントが移動する。そして、コンポーネントを供給する革新的企業がバリューチェーン上で最も高い利益率を獲得し始める。
このように、企業そのものがコモディティ化してしまうと、買収を試みても利益方程式の結果は向上しない。実際、どうにもならない。この状況に陥った企業は、「利益を生み出すであろう領域」、すなわちバリューチェーンのなかで最も利益率の高いポイントに移動することを考えるべきなのだ。
現在、新薬のパイプライン(開発販売体制)を拡充できない、医師への直販モデルが陳腐化しているなどさまざまな理由から、大手製薬会社のビジネスモデルが揺らいでいる。
ファイザー、グラクソ・スミスクライン、メルクといった業界リーダーは、これらの問題を抱えたビジネスモデルを何とかしようと、競合他社の製品やパイプライン用資源を買収・統合することに力を注いできた。しかし、このような買収のせいで、たとえばファイザーの株価は40%も落ち込んだ。
バリューチェーンのなかで脱コモディティ化しつつある領域に焦点を絞ったほうが、はるかに優れた戦略であったと思われる。すなわち、治験管理はいまや新薬の研究プロセスの一部になっており、したがって製薬会社にとって不可欠な能力といえる。
このような状況にもかかわらず、製薬会社の大半が、コーヴァンスやクインタイルズといったCRO(医薬品開発業務受託機関)に治験をアウトソーシングしてきた。その結果、これらの企業はバリューチェーンで優位なポジションを確保している。
したがって、これらCROのほか、後発医薬品を専業とするインドのドクター・レディー・ラボラトリーズのような破壊的製薬会社を買収したほうが、ビジネスモデルの崩壊に瀕している大手製薬会社を再生する一助となろう。
【注】
Clayton M. Christensen and Michael Raynor, "Skate to Where the Money Will Be," HBR, November 2001.(邦訳「シフトする収益源を先読みする」DHBR2002年2月号)を参照。