研究者、外資系コンサル、伝統的日本企業、世界的NPO代表と多様な職を渡り歩いた著者が、自由な働き方を実現するためのスキルを公開した『人生100年時代の新しい働き方』がついに発売! 今回は、同書より、ライフシフトできる人が共通して実践している「聞き方」の鉄則「アンラーン+オープンマインド」をご紹介しましょう。

先入観は、ライフシフトの「種」を殺す

 最初に言ってしまうと、人の話を先入観なく聞くのは難しい。

 相手の話を聞きながらも、

「この人はこういう人だから、こういう意見になるんだよな」
「私もその経験はあるけど、そうじゃなかったな」
「聞かれたらこう答えよう。どの言葉尻を捉えて切り返せばいいかな……」

などということを、ついつい考えてしまう。こうして、聞きたいことを聞きたいようにしか聞かない、という悪習につながっていく。

 だが、自分の持っている常識や固定観念を捨て去り、まっさらな気持ちで聞くことができれば、思いがけず有用な情報を手に入れたり、ブレークスルーにつながる発想ができたりすることもある。言い換えると「聞きたいようにしか聞けていない」と、自分の中に入ってくる情報量も少なくなるし、情報摂取の歩留まりも悪いというわけだ。

 これはライフシフト時代にはとても「イタイ」事態を招きかねない。せっかくのチャンスが目の前を通っていったとしても、それに気づけないということにほかならないからだ。

アフリカ女性の何気ないひと言で
――情報摂取の鉄則「アンラーン+オープンマインド」

 私の知人に「聞く」ことに長けている人がいる。「はじめに」でも少しご紹介したライフシフター、仲本千津さんだ。

 彼女の事業、RICCHI EVERYDAY(リッチー・エブリデイ)は色鮮やかなアフリカン・プリントの布地を使ったデザインのバッグやトラベルグッズを製造しているが、その製造を担当するのは全員ウガンダの女性たち。仲本さんは、彼女たちの支援をすることも事業の目的の1つとしている。

 苦労の連続だったという起業したての頃、彼女は製造を担当する女性からこんな話を聞いたという。

「私はアフリカの布が大好きなの。だからバッグをつくるときに裁断した端切れを捨てるのは忍びないのよね。もったいないから、肩掛けのストラップに使って、バッグのデザインを変えたらどうかしら……」

 それまでバッグのデザインは、顧客である日本人の嗜好をよく知る仲本さんだけが行い、製造はウガンダ人の女性たちが担当するという線引きがあった。もしその前提に染まっていれば、「一応話は聞くけど、デザインは私の領域だから……」という先入観を持って話を聞いていたかもしれない。

 しかし、仲本さんはオープンマインドでいることを常に心がけている人で、このときも「うんうん、それで?」と話を聞きつづけたのだという。結果、そのストラップを使い、1つのバッグで4通りの使い方ができる「4 Way Bag」のデザインを完成させた。お客様の評価は高く、売上げも好調だそうだ。

 仲本さんのようにオープンマインドでいることは、なかなか簡単ではない。こうして自分の経験や知識を一度捨て去ることを英語では「アンラーン」と言うが、アンラーンするのは勇気がいることだし、時にはプライドを捨てる必要もある。

 だが、アンラーンするのは聞いている間だけ。聞いた情報をどう扱うかという段階になれば、知識や経験がもちろん必要になる。聞く間だけでも謙虚に、素直になってみてはどうだろうか。

 それでも難しいという方のために1つコツを挙げるとすると、誰に対しても「この人から学びたい」という気持ちを持つことだ

(続く)