新型iPhoneは、KDDIにとって売れれば売れるほど自らの首を絞める“毒リンゴ”になりかねない。低迷から復調するきっかけにはなるが、その副作用は大きいかもしれない。

「ついにKDDIから。iPhoneに、もっと『つながり』を」

 10月6日、千葉市内で講演したKDDIの高橋誠専務は、こう書かれたスライドショーを見せ、「最高のネットワークを届けたい」と通信品質の高さを強調した。その前日の5日未明、米アップルが新型のiPhone4SをKDDIから販売すると発表して以降、KDDIとソフトバンクがつばぜり合いを演じている。

 先手を打ったのはソフトバンクだ。5日、孫正義社長がツイッター上で、自社の通信速度はKDDIの4.6倍である「下り最大毎秒14.4メガビット」と言い広めた。

 だが、それはあくまで理論値にすぎない。その日の夜、ツイートを見たKDDI首脳は「エリアの広さでは圧倒的に有利。まったく心配していない。使えばわかる」と余裕の笑みを浮かべた。

 注目された料金設定では、KDDIが仕掛けた。7日未明、端末代金を実質0円(16GB)から月860円(64GB)にするプランを発表した。データ定額料金は通常のスマートフォンよりも、480円安い月額4980円にした。

 これに対し、孫社長は7日昼に緊急会見を開き、端末代金を0円(16GB)から月880円(64GB)にすると発表した。会見で配布された資料には月960円(64GB)と書かれており、ぎりぎりまで調整が続いたことをうかがわせた。

 さらにデータ定額料金をKDDIより570円安い月4410円と据え置き、タブレット型端末のiPad2まで実質タダで配る。前の機種である「3G」と「3GS」の契約者が「4S」へ変更するのも無料。加えて、すでに端末代金を払った客にまで6000円をキャッシュバックするという、なりふり構わぬ強攻策だ。