車掌よりも運転手が不健康だった理由

 座りすぎる職業の危険性をいち早く示したのが、イギリスのJ・N・モリス博士による研究です。調査が実施されたのは、今から60年以上前のこと。当時、ロンドン市内を走る赤い2階建てバスには、運転手と車掌の2名が乗務していましたが、心臓病のかかりやすさを比較したところ、運転手の方が心血管疾患(心筋梗塞や狭心症)を発症する割合が2倍も高いことがわかりました。

 この差を生んだのは運転手の座りすぎです。一方の車掌は立ったまま、バスの中の階段を昇り降りしていたのですから、その差は歴然です。

 ですから、トラックや営業車など運転時間が長くなる仕事の方も厳重注意が必要ですが、事務職やプログラマーなどで、仕事の大半を座って過ごす職業の人も同様です。

 座りすぎは、血流不足から始まる体調不良に加え、運動器の故障も招きます。同じ姿勢で座り続けると、骨や筋肉に部分的な負担がかかりすぎ、腰、肩、首などにコリや痛みが起こりやすくなるのです。座りっぱなしでいると姿勢もくずれ、無理な姿勢を維持しようと筋肉がさらに緊張してガチガチに硬くなるという悪循環。座りすぎの本当の怖さを知らずに放っておけば、筋力、体力もガクッと落ちて老化が進むばかりです。

 とはいえ、真面目に働きすぎる日本人は、体調不良をおしてがんばってしまいがち。「忙しいから」と、休憩もとらずにハードワークや残業をこなせば、それが命取りになることもあります。これだけは何としても避けなければなりません。

 もちろん定年退職で仕事を離れ、今はテレビの前で座りっぱなしというリタイア組も、注意が必要です。