今回のASEANサミットで一つ明確になった流れがあった。それは、アジア諸国のなかで中国の影響力が一段と拡大する一方、米国から距離を置く国が増えたということだ。
伝統的に、ASEANサミットでは、アジア各国と米国の首脳が今後の政治・経済の連携などを協議することが多かった。それを通して、アンカーとしての米国の地位が維持され、アジア太平洋地域の安定が保たれてきた。
しかし、2013年のAPECサミットを境に、状況は大きく変化している。中国の存在感が高まる一方、米国の存在感が低下しているのだ。その背景の一つとして、当時のオバマ米大統領が国内案件を優先せざるを得ず、アジアへの関与が大きく低下したことだ。
その時、中国は「アジア・インフラ投資銀行」(AIIB)の設立を世界に提唱した。これを受けて、G7加盟国の英国を皮切りに、独仏伊がAIIBへの参加を表明した。ある意味、中国は米国不在を突き、米国を中心とする国際社会の切り崩しを図ったといえるだろう。
それ以降、アジア太平洋地域を中心に、中国は影響力を強めようとしている。これまでのところ、米国はこの状況を食い止めることができていない。むしろ、トランプ政権の「自国第一主義」の姿勢もあり、ここへ来て米国の求心力が一段と低下している。
影響力強化で
大国への道を歩む中国
今回のASEAN関連首脳会議では、アジア各国が、中国と米国の両方に配慮している姿勢を示すスタンスが多かった。しかし、各国首脳の発言内容などを詳細に分析すると、アジア各国は米国ではなく、中国への配慮と関係の強化に向かっている姿が浮き彫りになる。