海外への資産フライト
「セレブもOLも高齢者もせっせと預金を海外口座に移している。その驚くべき方法とは?」
これは、文春新書から出ている「資産フライト 『増税日本』から脱出する方法」という書物のカバー書きの内容である。この本は、外国への資産逃避を進める理由として、金融規制や低利回りなどをあげている。高い金融利回りを求めて海外資産運用が高まることはむしろ当然のことと言えよう。
しかし、日本の居住者である限り、たとえタックスヘイブンや銀行機密保護が強力なスイスなどに金融資産を移したとしても、そこから生じる所得は、日本で税務申告する義務がある。これを怠れば、脱税として刑事罰の対象となる、ということは、銘記しておいたほうがいい。
資産フライトが、脱税の勧めとなってはならないのである。
膨れ上がるケイマン・マネー
オリンパス事件で注目が集まっているケイマン・マネーだが、わが国とケイマンなどタックスヘイブンがらみの直接投資は急増している。
タックスヘイブンというのは、租税回避地(租税天国ではない!)のことで、これから述べるように、税率の無い、または低い国・地域というより、情報の透明性に欠ける国・地域、というように、定義自体が変わってきている。
日本銀行の国際収支統計(2006年)でわが国の対外・対内直接投資の相手先国をみると、わが国に直接投資を行っている国の第1位は米国であるが、第2位はオランダ、第4位はケイマン諸島、第7位はシンガポールである。他方で、わが国が対外直接投資を行っている国をみると、第1位は米国であるが、第2位はオランダ、第5位はケイマン、第7位シンガポールとなっている。