ビジネスは、まんじゅうと同じ

太朗さんにはわかりにくいようで、目をパチパチしていた。

「たとえば、旅行者が旅先で泊まるところは旅館かホテルがふつうやけど、インターネットで部屋を貸してくれる人を見つけられたら便利だ、と気づいた連中が民泊のウェブサイトAirbnbを始めた。ところが、このサービスを始めた創業者3人の中にホテル関係者は1人もいなかった」

「なるほど」

「門外漢やから見えること、できることもあるんや」

「門外漢ならいいんですかね?」

太朗さんは踏み込んでいった。

「そんなわけないやろ、ボケ。ビジネスはまんじゅうなんや」

男の声は大きくなった。

「ま、まんじゅうですか?」

「そうや。まんじゅうはアンコと皮でできとるやろ。これを理容室に例えるとな……髪を切る技術がアンコや。そして、理容室をどういうふうに運営するかという経営技術が、まんじゅうの皮や。つまり、アンコと皮がうまく組み合わさってこそ美味しいまんじゅう、つまり繁盛する理容室になるというわけや」

「なるほど、うまいこと言いますね」

「で、皮である経営技術そのものは基本的にどんな業種にも応用できるから、アンコが何であっても包むことができる。まあ、経営コンサルタントというのはまんじゅうの皮の専門家や、と思ったらええわ」

「はい」

「まんじゅうの皮の専門家は、アンコも皮も含めた美味しくて売れるまんじゅうを作るためのサポートをするんや。それはそれで、専門があるもんなんや」

「専門の知識ってあるんですね」