2枚のチャートで経営を考え続ける
「でも、理容室で、この2枚のチャートを使えるんですかね?」
「ええこと言うな。『ザンギリ』の強みはどこなんか、どこに強くできる余地があるんか、ということを考えるヒントにしたらええんや」と言って、立三さんは例を説明してくれた。
・理容道具やシャンプーなどの購入にムダはないか?(購買)
・カット技術のレベルが下がっていないか?(製造)
・宣伝はうまくいっているか?(販売、マーケティング)
・新しい技術やサービスを考えているか?(研究開発)
・仕事量や賃金を適正にするノウハウを持っているか?(人事・労務管理)
・理容師の確保がちゃんとできているか?(調達)
「いつもこの2つのチャートを意識して、誰が攻めてくるか、どこに攻めていくか、どこを強くできるか、ちゃんとやれているか、といった視点で『ザンギリ』の経営を考え続けたらええんや」
「なるほど」
【付加価値連鎖分析/バリューチェーン】
原材料の調達から製品・サービスが顧客に届くまでの企業活動を、一連の価値(バリュー)の連鎖(チェーン)としてとらえる分析手法。
(つづく)
作家、映画監督、経営コンサルタント 1966年、京都生まれ。京都大学経済学部卒業。(株)電通を経て渡米し、カリフォルニア大学バークレー校にて経営大学院にて修士号(MBA)取得。シリコンバレーで音声認識技術を用いた言語能力試験などを行うベンチャー企業に参加。大学院在学中にアソシエートプロデューサーとして参加した短編映画『おはぎ』が、2001年カンヌ国際映画祭短編部門でパルムドール(最高賞)受賞。帰国後、経営コンサルティング会社を経て、(株)Good Peopleを設立。キャラクターの世界観構築など、経営学や経済学だけでなく、物語生成の理論、創造技法や学習技法を駆使した経営支援、経営者教育を手がけている。著書は、『プロアクティブ学習革命』(イースト・プレス)、『次世代へ送る〈絵解き〉社会原理序説』(dZERO)ほか。映画は、初監督作品の長編ドキュメンタリー『AGANAI』の公開に向けて奮闘中。京都在住。