人気の「なす汁せいろ」「ごぼう天そば」など
酒の後に食べる種物蕎麦がなんといってもいい
だが、この数年、辺りに飲食店やカフェ、専門店が増えた。夜の根津は面白いと言われるようになり、街の勢いが増した。根津に人が集まり、若い世代も目立つようになった。
そんな根津の変遷を肌で感じながら商売をしてきた山梨さんは、蕎麦屋の良さを若い世代に知ってもらいたいという。だから、蕎麦にはとことん気を遣う。”初めて出会う手打ち蕎麦の味が、若い人たちの蕎麦屋へのマインドに影響を与える”と自らの体験から思っているのだ。
その蕎麦はせいろが二八で、田舎が外一だ。
せいろの切り口はほぼ正四角形で、まさにすべての麺体が均等で仕事師らしい蕎麦だ。箸に取ればふわりと香り立ちがして、腰もしなやかで歯応えが心地よい。
「よし房」の場合、酒のあとにはなんといっても種蕎麦がいい。
「茄子じるせいろ」は夏季だけに出していたのだが、お客の要望で年間メニューになったものだ。鴨の皮をゆっくり炒めて脂を取り、その脂で茄子を炒める。茄子は見た目に半生かと思うくらいだが、茄子に鴨脂の甘みがしっかり滲みて旨みで膨らんでいる。
冷たいぶっかけ蕎麦はいくつかあるが、中でも「ごぼう天そば」が定番人気商品だ。牛蒡は身が厚いがさくりと噛めて甘みがある。常連はこれを半分は酒の肴にするのが定法らしく、これはさっそく真似てみたいものだ。せいろの美味さ、種物蕎麦の人気、蕎麦料理の新鮮さ。下町の粋な仕事を知らない、あの人を招いてやろう。
「よし房」までは時間があれば、日暮里辺りからぶらぶらと散歩をしてみたい。蕎麦屋酒を味わい、招いた人の気持ちと深まれば、根津神社の霊験がその身に宿ることになるかもしれない。
●営業案内
・住所 東京都文京区根津2-36-1
・電話 03-3823-8454(FAX共通)
・営業時間 11:00~15:00(LO14:45) 17:30~21:00(LO20:30) 日曜のみ11:00~15:00 定休・火曜
●予算:3000~4000円
●HP:なし
●おすすめ:せいろ、田舎(共に750円)のほか、人気は茄子じるせいろ(1300円)、ごぼう天そば(1000円)、種ものそばが豊富でぶっかけの越前おろしや辛み大根あげ餅そば(共に950円)など、酒肴の締めに頂きたい。
●酒・料理:酒は豊杯・純米しぼりたて・生酒がおすすめ、人気の飛露喜や醸し人九平次は共に1合1000円設定。女性に人気の獺祭スパーリングもある。肴は蕎麦の刺身(350円)、蕎麦味噌の春巻き(400円)がおすすめ。これに鴨焼き(950円)、出し巻き(650円)で立派なコースになる。会食などでは女将に料理の組み合わせを選んでもらうのもいい。
●訪問:21時まで営業なので、会食や接待にも重宝する。休日には谷根千のギャラリーめぐりをしてから蕎麦屋に入るのもいい。
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