「帰国子女の英語は使えない」と言われる理由

親の仕事の都合で幼少期を海外で過ごした帰国子女は、外資系企業などに就職した際に、壁にぶつかることが多いと聞いたことがあります。
流暢な英語コミュニケーションの能力を買われて採用されたにもかかわらず、蓋を開けてみると、彼/彼女の話す英語がとても幼稚で、ビジネスには相応しくなかったりするからです。
日本のテレビ番組では、いわゆるハーフのタレントが年上の人にちょっと失礼な「タメ口」で話したりするのを面白がるような風潮がありますが、あれをビジネスシーンでやってしまうと致命的です。

しかも今後は、「英語をしゃべる能力だけはある子」は大して珍しい存在ではなくなるでしょう。だとすると、カジュアルな会話の能力だけではなく、一定の知性に裏打ちされた「大人の英語」をマスターしない限り、大多数の人材のなかに埋もれることになりかねません。

世界各国にオフィスを持つ外資系コンサルティング企業の方から聞いた話です。同社内では「日本オフィスだけが英語が通じない」という残念な評判があるそうです。
この会社は戦略コンサルとしては世界トップとされる企業ですから、集まっているのはトップクラスの優秀な日本人のはずです。にもかかわらず、まともに英語が話せる人はせいぜい3割。残りの7割の社員は「実務レベルの英語力がない」と見なされているということでした。

これは英語力そのものの水準もさることながら、ビジネスの現場で通用する表現力が不足しているということです。もはや「英語なんて話せればいい」「体当たりでなんとかなる」とは言っていられない時代なのです。

(本原稿は斉藤淳・著『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から抜粋して掲載しています)

【著者紹介】斉藤 淳(さいとう・じゅん)
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。
1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。
2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。「第二言語習得理論(SLA)」の知見を最大限に活かした効率的カリキュラムが口コミで広がり、わずか数年で生徒数はのべ3,000人を突破。海外名門大合格者も多数出ているほか、幼稚園や学童保育も運営し、入塾希望者が後を絶たない。
主な著書に、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)のほか、10万部超のベストセラーとなった『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『10歳から身につく問い、考え、表現する力』(NHK出版新書)、また、研究者としては、第54回日経・経済図書文化賞ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある。