実際、困っているお年寄りを無視することが多くなりました。

 そして、目の前でお年寄りが倒れたら、「まず、写真を撮って自分が潔白となる証明を残し、それから助けの手を差しのべる」というやり方がメディアで紹介されました。

 日本では信じられない話かもしれませんが、以後、中国では実際に多くの人が同じ方法を取りました。

 この事件は中国の道徳モラルを「10年は後退させた」と専門家が指摘しています。

中国自慢のネット社会に
高齢者は置き去りにされている

 誰にとっても暮らしやすい社会とはどのような社会なのか――。

 今、皆が自慢している中国のインターネット社会で、残念ながら高齢者たちは置き去りにされた状態となっています。

 彼らは年を取るにつれ、身体機能の衰えよりも、精神的な焦り、つまり自分が「時代の変化に遅れて追いつけない」という喪失感に翻弄されている寂しさが大きいに違いありません。

 一方で、ITの発展に道徳モラルはついていけているのか、考えさせられます。

 最近、アリババ創業者のジャック・マーが新たな事業として始めた無人スーパーが、またも熱い視線を浴びています。

 これに対してある高齢者の女性が「無人スーパーなら、人件費を省いた分、品物の値段は安くなるの?もし安くならなかったら、我々庶民にとって何のメリットがあるの?ITやキャッシュレスやいろいろ称賛されるけど、我々高齢者には一切関係ない。会話のない買い物はつまらない、ますます孤独になっていくだけ」と愚痴る姿は、多くの高齢者の心情を代弁しているのかもしれません。