出社してパソコンを立ち上げる。そのあと目にする会社のウェブには、あまり良いイメージを持っていない人が多いのではないだろうか。
しかし、そのウェブを作った担当者からすれば、「われわれも頑張っているのだ」というのが本音だろう。確かに、社員の一人ひとりを満足させてあげられるような社内コミュニケーションのシステム化は、至難の業だ。それも数万人の従業員への情報流通といったら気が遠くなる話だろう。
ところが、保守的なイメージが強いある大銀行で、「社内ウェブ」による情報流通のベスト・プラクティスが実践されていると言ったら、読者諸賢も驚かれるのではないか。
いまや情報戦を超えた情報洪水とも言える状況に入り、多くの企業では社内の情報流通は問題だらけだ。現場は悲鳴を上げ、情報を垂れ流す本社に不信すら抱いている。結果として、知るべきことを知らないことも日常茶飯事だ。
そんな時代背景の中で、三菱東京UFJ銀行は数年に渡って社内の情報流通に地道に取り組んできた。特筆すべきは、先進的な情報システムだけでなく人の力との組み合わせで実践していることだ。まだ発展途上だが、そこには多くの企業が学ぶべき教訓がある。
各本部から降ってくる情報の雨から
ユーザー本位の情報伝達へ
筆者は、三菱東京UFJ銀行の事例は、様々な社内コミュニケーションがある中で、本社・本部からの情報の伝達という基本中の基本のモデルとしてみることができると考えている。
このベスト・プラクティスの源流は合併前の両行で行っていた改革であった。旧東京三菱銀行では仕組みの整備による情報発信の交通整理に取り組み、旧UFJ側の改革も組み合わせて、2006年に三菱東京UFJ銀行の新たなプラットフォームを構築した。