「自分なりのセンテンス」を書けるようになる

他方で、子ども一人でもできる学習、つまり、「書く」「読む」の時間ウエイトを高めていくことも大切です。
同級生の目を気にしだすと、親子で英語の歌を歌ったり、つきっきりでフォニックスの練習をしたりするのを嫌がる子も出てくるでしょう。子どもが読んだり書いたりしたものについて親子でコミュニケーションを取る、あるいは、ちょっとした英語ゲームを一緒にやる程度にし、それ以外はなるべく環境整備に注力します。

8~10歳の子には、とくにライティングの学習を本格的に開始することをおすすめしています。ここで言うライティングとは、お手本を書写するだけの練習ではなく、自分なりに短いセンテンスをつくり、自分のことを表現するトレーニングのことです。
子どもたちに「自分」が出てくると、物事をまとめるときの独自の視点ができてきます。誰にでも当てはまる平板なセンテンスを書かせても、役に立ちませんし、何より面白くありません。「ぼくはサッカーが好き」「わたしはダンスを習っている」というように、本人にとって意味がある表現をとっかかりにして、書くトレーニングを徐々に開始していきましょう

英語のロールモデルを見つけよう

これくらいの時期の子どもは、他人との違いに目が行くようになるという話をしました。英語学習のための動機づけを考えると、この変化は追い風になると思います。ごくシンプルにいえば、「英語ができるとかっこいい!」という認知が、本人のやる気をますます高めてくれるからです(Dornyei & Ushioda,2009)。

そのときぜひ振り返っていただきたいのが、子どもが憧れている人やモノです。たとえばサッカーをやっている子であれば、憧れている選手が海外で活躍し、流暢な英語を話しているシーンは、強力な動機づけ材料になるでしょう。第二言語習得においてロールモデルの存在がカギを握るということは、SLAの諸研究からも明らかにされています。

子どもが「自分もいつかこんなふうになりたい!だから英語も話せるようになりたい!」と思えるようなロールモデルを一緒に探しましょう。その人物が英語を話している様子をYouTubeなどで探し、ぜひ子どもと一緒に見てください。

※注:本記事の内容は『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から抜粋・再構成したものです。記事中の参照文献・おすすめ教材などは、こちらのサポートページでご確認いただけます。
「世界最高の子ども英語」専用サポートページ
https://booksdiamond.wixsite.com/childenglish

【著者紹介】斉藤 淳(さいとう・じゅん)
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。
1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。
2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。「第二言語習得理論(SLA)」の知見を最大限に活かした効率的カリキュラムが口コミで広がり、わずか数年で生徒数はのべ3,000人を突破。海外名門大合格者も多数出ているほか、幼稚園や学童保育も運営し、入塾希望者が後を絶たない。
主な著書に、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)のほか、10万部超のベストセラーとなった『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『10歳から身につく 問い、考え、表現する力』(NHK出版新書)、また、研究者としては、第54回日経・経済図書文化賞ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある。