テストをするほど記憶力が上がる!

 仮に、英語の単語一覧から1語覚えるたびに20ドルもらえるとしよう。週に一度のテストに向けて学習する方法は2つ。1つは、10分かけてリストを覚える。もう1つは、最初の5分を覚えるのに使い、残りの5分は覚えた単語を紙に書く。

 後者を選んだ場合、紙に書くのは何も見ずに思いだせた単語のみとし、書いた単語の答え合わせはできないものとする。

 これとよく似た学習法を使った実験を紹介しよう。被験者となった学生は、教科書を2回読む、もしくは1回読んで思いだせたことを書きだすという学習のどちらかを行った。そして、学習の5分後、2日後、1週間後にテストを受けた。

 結果は図表2を見ればわかるように、2回教科書を読む学習(過剰学習)の効果は数分のあいだは持続するが、時間がたてば衰える。奇妙なことに、時間がたつと、紙に書きだす学習のほうが2回読むよりも効果的だ。後者のやり方で学習すれば、1週間たっても15ポイント多く覚えていられるのだ(注1)。

教科書を繰り返し読むくらいなら○○せよ図表2「思いだす練習」が効果アリ
拡大画像表示

 では、覚えたい単語の一覧に5分間目を通したあとに、次の3つのやり方で学習するとしよう。

A.もう5分かけて単語一覧に再度目を通す
B.思いだせた単語を紙に書きだすという自己テストを1回行う
C.紙を3枚用意して、自己テストを3回行う

そうして1週間後にテストをすると、図表3のような結果になる。

教科書を繰り返し読むくらいなら○○せよ図表3 自己テスト3回の勉強法がいちばん思いだせた
拡大画像表示

 いったいどうなっているのか。まったく同じテストを続けて3回行うことで、なぜこれほど大きな効果が生まれるのか?一見奇妙に思えるが、そうなるのは実は当たり前のことなのだ。単語リストに複数回目を通す学習は、読む練習であって思いだす練習ではない。もっと鮮明に思いだせるようになりたいなら、「思いだす練習」をするべきだ。

注1 ほかにも、5分の自己テストは25分の学習に相当すると唱える研究もある。紙でなくても、フラッシュカードや選択形式テストでも代用できるし、単純に頭のなかで思いだそうとするだけでもいい。思いだす力は、記憶と感情に働きかけることで向上する。驚くべきことに、記憶と感情は互いに影響を及ぼし合うのだ。