「子どもに英語をマスターしてほしい!」――そんな願いを持っている親御さんは少なくないだろう。しかし、そんな人でも「英語がペラペラになればそれでいい」などとは思っていないはず……。むしろ、本当にわが子に身につけてほしいのは、世界のどこでも生きていける頭のよさ、つまり「本物の知性」なのではないだろうか。
実際、応用言語学や脳科学、教育心理学などのアカデミックな研究では「外国語学習の機会が、子どもの知力やIQを高める」といった知見が蓄積されつつあるという。
いま、こうした科学的根拠(エビデンス)に基づいた指導によって、子どもたちの英語力を着実に伸ばし、人気を集めている英語塾があるのをご存知だろうか。元イェール大学助教授の斉藤淳氏が代表をつとめるJ PREPだ。
本連載では、同氏の最新刊『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て!』から、一部抜粋して「ほんとうに頭がいい子」を育てるための英語学習メソッドを紹介する。

なぜバイリンガルは「知能が高い」のか?

以前は「バイリンガル環境で育つ子どもは、一定時期にわたって言語能力の発達が遅れる傾向がある」などという指摘もありましたが、むしろ、バイリンガルの子はIQが高いという報告がなされているのも事実です。

じつは、通常の外国語学習者についても、似たようなことが言えます。このメカニズムは、みなさんも大いに関心があると思いますので、今回と次回でこちらを説明しておきましょう。

旧来の英語教育を受けた日本人が、英語を話せるようにならないのは、いわば日本語用のOS(基本ソフト)を使いながら、英語用のアプリを走らせようとしているからです。つまり、すでに脳内にある「私」「犬」「見る」といった情報に「I」「see」「dog」を対応させて記憶し、さらに英文を組み立てるときのルール(つまり文法)を知識として書き込んでいるわけです。

「え、それが普通じゃないの?」と思いましたか?では、こういう学習しかしていない人が英語を話そうとすると、どんなことが起こるでしょうか?
たとえば、「私の犬を見ましたか?」と英語で言いたいときを考えてみましょう。

1. まず「私の犬を見ましたか?」という日本語文を考える
2. 日本語文に含まれる語彙を英単語に置き換える
3. 英文法に基づいて語順や時制などを整理する
4. でき上がった英文を声に出す

あえて複雑に書きましたが、これはつまるところ、和文英訳のプロセスです。旧来の学校英語や受験英語が鍛えているのは、和文英訳/英文和訳の能力でしかありません。
これには異常に時間がかかるため、実際の会話では役に立ちません。また、日本語の知識に英語の知識を「対応」させているだけなので、時間とともに英単語や英文法の知識が抜けていけば、学習成果はきれいさっぱり頭から消去されます

これこそが、「6年間も学んだのに何も英語を覚えていない日本人」の脳内で起きていることなのです。