新たな危機の発生に
対応するのは政府の責務

 今回の内閣改造で、一体改革問題に詳しい岡田副総理を担当相としたことは、野田総理の不退転の決意の表明と受け止めたい。素案が合意された以上、法案化して国会で成立させるまで全力で正面から議論をしてほしい。

 これに対して自民党は、今のところ、消費税率の引き上げはマニフェストに書いていない、「マニフェスト違反」という主張をして、与野党協議を拒否している。

 民主党が国民の支持を集めるべく、大盤振る舞いの子ども手当、年金一元化・7万円最低保証年金、高速道路無料化など、実行不可能なマニフェストを掲げて選挙を戦い政権交代を果たしたことは、厳しく非難されなければならない。これらは、素直に「マニフェスト違反」として、国民に謝るべきだ。最終的には、次期総選挙で国民がその判断を行うこととなる。

 しかし、社会保障・税一体改革、消費税問題に関しては事情が異なる。ギリシャに始まりイタリアに波及し、今後も収束のめどの立たない欧州の財政危機は、総選挙後に生じた事態である。マーケットにソブリンリスクという概念ができたのも、ここ1年の話である。

 このような新たな危機が、いつわが国に波及するかわからない不気味な状況下で、必要な施策を講じることは、政府の重要な責務である。逆に、「マニフェストに書いてない」と言って、必要な施策をとらなかったら、それこそ問題だ。無駄な時間を費やして政局化する時間的余裕はないはずだ。

 そもそも現下の財政危機の直接かつ最大の原因は、小渕総理時代の、ほとんど効果のなかった公共事業と減税という大判振る舞いである。

 1998年夏に橋本政権を引き継いだ小渕政権は、公共投資の拡大に加えて、個人所得税の定率減税(3兆円、住民税1兆円と合わせて4兆円規模)、法人税減税(2兆円規模)を実施、今日のわが国税制の税収調達能力に大きな影響を及ぼす減税を行った。このことが、今日の税収不足の最大原因の一つである。