フランスを真似して出生率を上げよ

 ところで、以上の推計結果は2006年の前回推計とそれほど大差がある訳ではない。その理由は、出生率仮定(長期の合計特殊出生率)を、中位仮定で前回の1.26から1.35に嵩上げしたからである。これは、ここ数年の出生率の微増結果を織り込んだためであるが、その主因は団塊ジュニア世代が40歳前後にさしかかり、出生を急いだ一時的な現象にすぎないという見方も根強い。そうであれば、今回の中位推計自体が楽観的に過ぎるとの指摘が一部にあることも十分頷けよう。

 しかし、大切なことは将来人口推計の精度を議論することではあるまい。将来人口推計はわが国の政策立案の土台となるべきものである。そうであれば、今回の推計結果を見て、これからのわが国にとって、どういう政策が必要かを真剣に議論することこそが望まれているのである。

 メディアの論調を概観すると、少子高齢化の傾向は大きくは変わらないとして、肩車型の社会保障制度の構築を急ぐべきだとするものが多数を占めているように見受けられる。本当にそうだろうか。もちろん、最悪のケースを想定して事に臨むのは、政治であれ経営であれ、重要なことには違いない。

 しかし、今回の推計を虚心坦懐に眺めれば、普通の人は、人口を増やす政策を総動員して対処しなければ、わが国は大変なことになると思うのではないか。それが正常な反応だと思われる。

 そして、先進国の中には、現に政策を総動員して人口を増加させる基盤となる出生率を上昇させた国が幾つもあるのである。たとえば、フランスや英国、スウェーデンでは、この10年間で見ても明らかに出生率が上向いており、フランスではボトムの1.66%(1994年)から、わずか10~15年で出生率が2%前後にまで上昇した。2006年が2.00%、2007年が1.98%、2008年が2.00%、2009年が1.99%と高位安定状態が続いている(内閣府「子ども・子育て白書2011年版」による)。

 では、なぜフランスで出生率が上昇したのか。それは、シラク3原則と呼ばれている基本方針(1.子どもを持つことによって新たな経済的負担が生じないようにする  2.無料の保育所を完備する  3.〈育児休暇から〉3年後に女性が職場復帰するときは、その3年間、ずっと勤務していたものとみなし、企業は受け入れなくてはいけない)をしっかりと樹立し、出産・子育てと就労に関して幅広い選択肢ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められたからである。婚外子を差別しないPACS(民事連帯契約)もこの政策パッケージの中に含まれる。

 内閣府や厚生労働省のホームページを見ると、フランスの両立支援に関わる政策の研究・分析はすでに必要十分になされていることが窺える。だとすれば、戦後のわが国がアメリカの真似をして、世界第2の経済大国を築き上げたように、これからのわが国はフランスの真似をして、出生率の上昇を図ればそれでいいではないか。是非ともメディアは、この問題を取り上げてもらいたい。

 人口を増やす政策を総動員することこそが、社会保障・税一体改革と並ぶわが国の喫緊の政策課題であることは疑いを入れないところであると考える。