自分自身の気づきで「片づけスイッチ」が入った!
テレビの片づけ取材で伺った、70代の千恵さん(仮名)夫婦。
「まず、打ち合わせを」と招かれたリビングは、収納がまるで機能せず、モノで溢れ返っていました。
テーブルには、文房具、調味料、湯呑み、新聞、リモコン……が所狭しと置かれ、床には、手作り好きの千恵さんが集めた、こまごまとした雑貨類、料理器具、密閉容器などが雑然と堆積しています。
夫のモノも少なくありません。とくに趣味の釣り道具。使いこなせる量を遥はるかに超えた釣り竿が、部屋の片隅に乱雑に立てかけられています。
テレビ取材では度々あるのですが、まず始まったのは、饒舌すぎるほどの千恵さんの言い訳です。
「忙しいから」「疲れているから」「あれもこれも必要だから」……取材に応募したのは千恵さん本人なのですが、大変な警戒心。
一方、夫は、だんまりを決め込んでいます。腕組みして座っている様子は、まるで「オレは捨てないからな。なんでも捨てりゃいいってもんじゃない」と言わんばかり。
こういう場面では、私はあえて「片づけ指南」はしません。
では、何をするか?黙って話を聞くだけです。
捨てられない言い訳に「そうですか」「そうなんですね」と相づちを打つだけ。
こんなやり取りが数時間続いた時、私は言いました。
「取っておきたければ、捨てなくたっていいんですよ」と。
すると千恵さんは、いきなり、そばにあった10個以上のウチワを手に取って「こんなに要りませんよね」と捨て始めたのです。
プラスチックのウチワをごそっと捨て、竹でできた質のよいウチワを3枚だけ残しました。
すると今度は、夫がゴミ袋を取り出して「こんなにいらねえな」と自分の釣りグッズを捨て始めたのです。
しかも、後日の頑張りもすごかった。
キッチンの棚には、千恵さんの手作り料理を保存する大量の容器が積み重なっていましたが、私は「これを捨てるのはハードルが高いな」と判断し、あまり話題にしませんでした。
ただひと言、「落下の危険性がありますね」と伝えたのです。
するとどうでしょう。
10日後に伺ったら、山のようにあった保存容器が半減していたのです。
それは私にとっても思いがけない変化。
「千恵さん、すごい!」と思わず褒めてしまいました。
片づけ指南は一切していないのに、なぜ千恵さん夫婦が片づけだしたのか?
当初は、私という抵抗勢力の登場で警戒していたのですが、心が徐々にほぐれてきた時、「あ!自分は言い訳ばかりしている!」と気づいたそうです。
これが、千恵さんのターニングポイントになりました。