2018年1月、「つみたてNISA」という制度がスタートしました。「つみたてNISA」は、国民に長期資産形成をうながす目的で金融庁の肝いりで始まった制度。NISA口座を開設して、一定の条件を満たす投資信託に「積み立て」で投資すると、20年間にわたり投資で得た収益が非課税になります。投資できるのは年間40万円まで。ビギナーでも安心して始められるシンプルな投資法です。とはいえ、どの投資信託を買ったらいいの?どの金融機関でやればいいの?など、いざ始めようと思っても、いろいろ迷ってしまいますよね……。そこで、本連載では、最新刊『つみたてNISAはこの7本を買いなさい』(ダイヤモンド社)を上梓した世界No.1投信評価会社トップの朝倉智也氏が、つみたてNISAとはどういう制度なのか、そのメリット、最強の資産形成法を賢く利用する方法等について、わかりやすく解説します。
情報、時間、資金がなくてもできる投資法
それが「定額で積み立てる」という方法です。
みなさんの中でも「積み立てがいいという話なら、聞いたことがある」という方はたくさんいらっしゃるでしょう。
しかし、定額積み立て投資については「なんとなく」ではなく、しっかり中身を理解しておくことが重要です。
それは、積み立て投資の効果を正しく理解することが投資に対する「怖いもの、危ないもの」という誤解を解くことにつながり、相場が乱高下するような場面でも心穏やかに投資を継続できるようになるからです。
積み立て投資のメリットとは
それでは、積み立て投資のメリットを見て行きましょう。
投資をするということは、値動きのある金融商品を買うわけですが、時間の経過とともに価格が変動するものを「定期的に一定額ずつ」買うと、どんな効果があるのでしょうか。以下の図をご覧ください。
たとえば、ある投信を毎月1万円ずつ積み立て投資するとして、基準価額が1万円、5000円、1万2500円、8000円、1万6000円と変動したケースを考えてみましょう。
最初の月は基準価額が1万円なので、買える口数は1口です。
次の月は、基準価額が5000円に下がったので1万円で2口買うことができました。
続いて3ヵ月目は基準価額が1万2500円に上ったので、1万円で買えた口数は0.8口。
4ヵ月目は、基準価額が8000円に下がったので、1万円で1.25口。
5ヵ月目には、基準価額が1万6000円に大きく上昇したので、1万円で買えたのは0.625口となりました。
この場合、投資額は5万円で、変えた口数は5.675口となります。1口あたりの平均投資額は、「5万円÷5.675口=8810円」です。
一方、もし「毎月1口ずつ」を買い続けた場合は、「1万円+5000円+1万2500円+8500円+1万6000円=5万1500円」を投資することになり、買える口数は5口。1口あたりの平均投資額は「5万1500円÷5口=1万300円」になります。
投信を効率よく買うには、「機械的に一定額ずつ買う」のが最も合理的
こうして具体例を見るとわかるように、「一定額ずつ」買う方法では、1口あたりの基準価額が安いときには口数を多く買い、高いときには少なく買うことにより、効率的に「口数」を増やすことができるのです。
この例を見ると、「価格が5000円のときに5万円分を買うことができれば一番いいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、値動きのある運用商品を買う場合、いつが「お買い得」なのかを見極めるのは非常に難しいものです。
「今こそ安値だ、たくさん買っておこう」と思っても、そこからさらに値下がりすることも十分に考えられます。
そして、そのような“賭け”をしようとすれば、「今は買うべきか、買うべきではないのか」などとつねに頭を悩ませることになるでしょう。
投信を効率よく買うには、「機械的に一定額ずつ買う」のが最も合理的な方法です。
モーニングスター株式会社代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。
銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立および上場準備を担当。
98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。
第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努めるとともに、各上場企業には、戦略的IR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)のサポートも行っている。他にSBIグループ各社の重要な役員を兼任する。
著書に『〈新版〉投資信託選びでいちばん知りたいこと』『一生モノのファイナンス入門』『ETFはこの7本を買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)、『マイナス金利にも負けない究極の分散投資術』(朝日新聞出版)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社)などがある。