ストレスには二段構えで対処!

 ここで効力を発揮するのがマインドフルネスの重要なキーワードであるラベルづけと、観的に自分を見つめる客観視と呼ばれるテクニックです。通常、電車のホームで列に割り込まれたり、肩がぶつかったり、乗り降りする時に足を踏まれたりすれば、「カチン」とするはずです。

 しかし、実はこの時、脳は無反応なのです。

 「カチン」と感じたのは、その脳の持ち主である私たち自身であり、脳自体ではないということです。

 どういうことかといいますと、私たちが足を踏まれた時、「これは悪い出来事だ!」と、私たちが勝手に「悪い」というラベルをつけているのです。

 そして、悪いことが目の前で繰り広げられているなら、「心身を緊張モードにしなければ!」と脳が判断し、緊張ホルモンのアドレナリンを分泌させ、その場に備えようとしているのです。

 もし、仮に足を踏まれることで運気が上がるという教えを受けた民族がいたとしたなら、いかがでしょうか?

 きっと足を踏まれた瞬間に飛び上がって喜び、脳は快感ホルモンのドーパミンを分泌することでしょう。

 これは少しオーバーだったかもしれませんが、例えば、英語がわからない日本人アスリートがいたとします。そのアスリートが、外野から英語でヤジを浴びせられた場合、おそらくネガティブな感情にはならないと思われます。

 それは、ヤジの内容が理解できず、ラベルづけが成立しないからです。

 もし、これが日本語でヤジを飛ばされたら、「なんてひどいことを言うんだ!」と悪いラベルづけが行われ、結果、脳がそれに見合ったホルモンを出し始めます。

 このように脳自体は、目の前で起こった現象に対してほぼ無反応であり、その脳の持ち主である私たちが「良い」か「悪い」かの評価を下して、脳がそれに見合ったホルモンを出しているだけなのです。

 つまり、なにごとも「良い」とか「悪い」とかのラベルづけをしない脳習慣が身につけば、ストレスホルモンの分泌は限りなく抑えられるのです。

 それでも、もし、ラベルづけをしてしまったらどうしたら良いのでしょう?

 ストレスは隙あらば、ラベルの仕分け作業をなに食わぬ顔でくぐり抜けてきます。つまり、ラベルづけ作戦が突破された時のことも想定しておくべきでしょう。

 こんな時は、もう1つのテクニックである客観視が役に立ちます。

 例えば、電車の中で足を踏まれ、「イラッ」としてしまいます。

 「時すでに遅し…」、つまり、「悪い」という評価が下された、あとの祭り状態です。このままでは、どんどんストレスレベルが高まっていってしまいます。

 そこで、このようなイラッとした時、「○○ということを考えた」と頭の中でつけ加えてみてください。

 「イラッとした…ということを考えた」とつけ加えるだけで、客観的に自分のことが見つめられるようになるのです。たったこれだけのことですが、これで感情と自分を切り離すことができるのです。

 実は、このテクニックはヨガの極意に通じるものでもあります。

 アスリートであれば、プレー中に外野からヤジが飛んでくることはしばしばだと思います。このような時、いちいちそのヤジに反応していては切りがありませんし、マインドフルネスな状態が崩れ、パフォーマンスの低下を招いてしまいます。

 こうした状況で役立つのが、ここでご紹介したストレスに対する二段構えの対処法です。

 ぜひ、日々の通勤時の車内などをトレーニングの場として、実践、活用してみてください。