企業の退職給付制度は、こうした人間の心理から考えられているという側面もある。退職金や企業年金というのは、いわば「給与の後払い」だ。本来なら退職金という制度にせず、その分を毎月の給与に上乗せして支払ってもいいのだ。事実、退職金制度を廃止し、前払いで給与に上乗せして支払っている会社もある。

 しかしながら、人間というのは非常に弱い心の生き物だから、もらった給料の中から老後の生活に充てる分をきちんと分けて積み立てておくなどということは、簡単にできるものではない。そこで、会社が「退職金・企業年金」という制度を作って、退職後に支払うよう、管理運用していこうというのが退職給付制度なのだ。

 そういう意味で、iDeCo が自分で作る「年金・退職金制度」だと考えると、途中で引き出せない仕組みにしておくことは極めて重要だ。ただし、途中で引き出せないのだから、いくら有利だからといっても無理はしない方がいい。積み立てするに当たっては、過重な負担になるような金額ではなく、続けられる程度で始めるのが賢明だろう。

誤解その3 専業主婦(夫)には何のメリットもない

 iDeCoの最大のメリットは、税金、それも「所得控除」にあると言われている。したがって、所得のない専業主婦(夫)にはそのメリットがないため、iDeCoは利用してもしょうがないと考えられているようだ。もちろん、これは専業主婦等に限らず、所得のない人にとっては所得控除を適用しようがないから、一見、もっともなことに思える。

 しかしながら、運用益の非課税という大きなメリットは、たとえ誰であれ使えるわけだし、非課税で積み立てした後に受け取る時も、金額によっては全く税金がかからないケースもあるので、何もメリットがないとは言えない。むしろ普通の資産運用に比べると、メリットの方が大きいだろう。加えて、今年からは税制が変わったことで、うまく利用すれば所得控除のメリットも受けられるのだ。

 従来、専業主婦などがパートで働く場合、その収入には俗に「103万円の壁」と言われる上限があった。これは給与所得控除の65万円に、基礎控除の38万円を合計した103万円までは収入があっても所得税はかからず、かつ配偶者の所得にも「配偶者控除」が適用されるという仕組みだ。

 2018年からは、この配偶者控除が適用される上限額が、103万円から150万円に引き上げられることになった。これによって、従来はもっと収入を得られるにもかかわらず、年収103万円までで抑えていた人も150万円までなら配偶者控除のメリットが受けられるようになったのだ。