大人のための世界に一つだけのそれぞれの成長法

「自分には能力がある」「自分が中心でありたい」と思えば思うほど、<br />やる気はなくなる<br />【秋元祥治×坪田信貴(前編)】坪田信貴(つぼた・のぶたか)坪田塾 塾長。これまでに1300人以上の子どもたちを個別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。「地頭が悪い子などいない。ただ、学習進度が遅れているだけ。なので、遅れた地点からやり直せば、低偏差値の子でも1~2年で有名大学、難関大学への合格は可能となる」という信念のもと、学生の学力の全体的な底上げを目指す

秋元 ありがとうございます。まずは、坪田さんの『世界に一つだけの勉強法』の話をしましょう。実は僕、こんなに一生懸命、本を読んだのは久しぶりですよ。
拝読した第一印象は、これは確かに世界に一つだけの勉強法なのだけれど「大人のための世界に一つだけのそれぞれの成長法」というふうにも読み替えられる。つまり、大人にとってもすんなりくる本だと思いました。

坪田 ありがとうございます。まさにそうですね。

秋元 そうやって思って改めて読み直すと、とても納得できました。坪田さんが書かれた勉強法ときくと、瞬間に受験本のようなイメージを持たれる方もいるでしょうが、この本に書かれているのは大人にとっての成長法だし、仕事術とか生き方術だと思いました。もう一つは僭越ながら、僕と同じように感じておられることが多いんだなとも思いました。

坪田 例えば、どんなところですか?

秋元 試験の問題みたいですね。例題ですか。

坪田 (笑)

秋元 例えば「枠を外す」という話がありましたよね。これも、今の大学までの教育の話で言うと、与えられた中でどう答えを出すかという枠に縛られている。自分が納得すればいいことを選べばいいのに、与えられたもののなかから答えを出そうとする。枠を外すというのは、自分は「~できる」という考え方であるということ。枠を外して長いスパンと大きな視野で物事を捉え直すこと。僕の本でも、「見えない枠」に気づき、そして自由になるための方法を書きました。

坪田 ありがとうございます。塾をやっている僕がずっと思っていたのは「志望校は」と尋ねると、生徒のほぼ全員が日本の大学を言うのです。そこは別にハーバードでもいいし、北京大学でも、ミラノ大学でも、マニラ大学でも、プノンペン大学でもいい。もっと言うと、極端な話、学校の名前ではなく「僕はこういうことをやりたいです」「志望校なんてどうでもいいです」みたいな、そういう答えをちょっと期待するのですよ。

秋元 なるほど、ハードルの高い期待ですが、わかります、わかります。

坪田 そういう人が1000人いたら1人ぐらいいてもいいんじゃないのと思うのです。みんな自分の今の模試の偏差値で考えたらC判定、B判定ぐらいのところを言う。そういうとき、僕は教育って何なんだろうなと考えてしまいます。