人材、導き方、ひらめきがすべて

ひるがえって、大企業が研究開発費を増やしたからといって、イノベーションが生まれるわけではない。

「イノベーションは研究開発予算と全く関係ない。アップルが〈マッキントッシュ〉を思いついた時、IBMは研究開発費に少なくとも100倍はかけていた。おカネじゃないんだ。人材と、導き方と、ひらめきがすべてだ」と言ったのはスティーブ・ジョブズだ。

このことは、ブーズ・アンド・カンパニーのデータでも証明されている。

研究開発予算の大きな企業のエグゼクティブ600人を招いて、どの会社が一番イノベーティブかを評価してもらった。

最もイノベーティブとされたのはアップルだった。

だが、アップルの研究開発費は70位。

2番目のグーグルの研究開発費は20位にも入っていなかった。

2004年と07年のノキアの研究開発費は総額で200億ドルを超えていた一方で、アップルは25億ドルだった。

この間に、アップルは〈iPhone〉を発売したが、ノキアは衰退の一途をたどっていた。

つまり、ライバルより多額の予算があってもイノベーションの助けにはならないし、むしろイノベーションを阻害する場合もあるということだ。

おカネがないことで「自前主義」の呪縛から逃れられることもあるし、それがチームの刺激となってより速く製品が開発されたり、新しいアイデアが生まれたり、創造性が花開くことも多い。