日本の89.2%の家計がなんらかの生命保険に加入しており、1世帯あたりで平均3.8件の生命保険か年金保険に加入しています。また、民間の生命保険を契約している世帯のうち、9割以上が医療保険・医療特約に、6割以上ががん保険・がん特約に加入しているという実態があります*。
何よりも驚くべきは、29歳以下の若年層で78%、子どもでも53%が生命保険に加入しているというデータでしょう。アメリカでは、若者に生命保険などを売り込んでもまず見向きもされないでしょうし、子どもに保険をかけるなどという発想を持つ人がまずいません。生命保険や年金保険に入っていたとしても、せいぜい1つか2つです。
一方で、保険に対する満足度や知識水準がかなり低いのも、日本人の特徴です。生命保険の保障内容に対して「充足感あり」と答えた人は4割にも満たず、3割以上の人が「充足感なし」と答えています。また、保険全般に関する知識についても、7割近くの人が「知識がない/ほとんどない」と回答しました。
つまり、なんとなく加入しなければいけない気がして加入しているものの、保険というものをじつはよくわかってもおらず、さほど満足しているわけでもないということですね。これが日本人の保険に対する実態なのです。
アメリカに引っ越してきたばかりのクライアントさんたちのご相談に乗ると、かなりの確率で「家計バランスシート」のなかに、日本で契約してきた生命保険がリストアップされています。お子さんがいるご家族であれば、学資保険に入っていることもよくあります。
そこで、彼らに「どうしてこの保険に入られたのですか?」と質問すると、だいたい次の2パターンの答えが返ってきます。
答え(1)「資産運用にもなると言われたので……」
答え(2)「もし万が一のときのためを考えて……」
まず結論から申し上げましょう。
「(1)保険で資産運用をする」という考え方は、ごくわずかな例外を除き、ほとんどの場合うまくいきません。預金と同様、保険は資産形成エンジンのパーツとしてはあまりにも非力です。また、もっと踏み込んで言うと、本質的には保険はそもそも資産でさえありません。
さらに、「(2)万が一のときのための保険」についても、多くの日本人は致命的な勘違いをしています。これは「リスク」に関する理解の甘さに由来しています。
……すでに保険に入っている人からすれば、いきなりショッキングなお話かもしれませんね。しかし、これはファイナンシャル・プラニングの基本に従えば、ごく自然なことなのです。今回は「保険は資産ではない」という点について、ご説明していきたいと思います。
「お金が増やせる“おトクな”保険」ってほんとう?
家計の資産形成エンジンを改造していくうえでは、資産の適材適所が欠かせません。これはつまり、それぞれの資産がどのような目的で存在するものなのか、そこにお金を入れておくとどんないいことがあるか、それによってしか実現できない機能は何か、などをよく知っておくということです。