また、「早く責任のある仕事に就きたい」「上が詰まっていて先が見えてしまう」と言ったこともよく聞きます。しかし、責任のある仕事を任されない理由はそれだけの実力が備わっていないからに過ぎないはず。また、上が詰まっているといっても、逆に言えば、将来の姿が見えるとも言えるわけで、先が全く見えない不安を知らないから言えることではないでしょうか?

 つまり、自分が変わる努力をせずに、自分の環境を変えるという安易な選択をしていては、また同じことを繰り返すだけになるということです。そもそも、今、その会社にいる理由は何であったのか。なぜ、その場所を選んだのか。すぐに環境を変えようとする人にとっては難しい質問になるはずです。その会社にいる限りは、それを選択した理由があるはずであって、そうした過去の意思決定を自らの基礎にしっかりと据える必要があるのではないでしょうか。

 繰り返しますが、転職は、今そこにとどまることよりも高いリスクをはらんでいます。だからこそ、具体的に行動する前にまず、原点に立ち返って、なぜその会社を選んだのか、本当にその会社では実現できないのかを自問する必要があります。

喫緊の事情がない限り
転職活動を開始しないこと

 ところが、現在のような先行きが不透明な時代においては、勤務先の業績状態もいつ何時劇的な変化を迎えるかもわかりません。突然、不本意な人事異動や処遇に見舞われるかもしれません。しかし、会社がなくなりでもしない限り、ちょっとやそっと不本意なことがあっても、それを克服しようとする努力が必要です。

 ところが、気持ちが落ち込んだり、やる気を失ったりしたとき、インターネットを見ても電車に乗っていても、様々な求人関係の広告が目に入ることでしょう。普段は気にもしていなかった「転職」というキーワードが突然現実的になるはずです。そして、実に便利に転職への一歩を踏み出せる仕組みが目の前に広がっています。しかし、それでも簡単には活動を開始してはいけません。

 もしも、活動を開始して、少しでも転職先を具体的に検討し始めれば、現状よりも「いいかもしれない」という可能性を必ず感じるものです。つまり、活動を開始すれば、必ずうまい話(うまそうに見える話)がやってくるものなのです。しかし、そうした可能性(あるいは先行きへの希望という言い方をしてもいいでしょう)はあくまで可能性に過ぎません。転職先で成果を出せる確率は、現在の職場での壁を打破できる確率よりも低いと考えるべきです。だからこそ、出来心も含めて試しに転職活動をしてみようなどと、ゆめゆめ考えてはいけません。