なぜ同じクルマを売っていて、販売数に差が出るのでしょうか? 営業とは、営業マンを通して商品を見ていただくことです。まずは営業の存在が、お客様にとって心地よいものでなくてはならないのです。営業がそのような雰囲気を提供できれば、売れる確率が高くなっていきます。

たまたまラッキーで売れてしまった人は……

 同じクルマを売っていて、販売数に差が出るのは気持ちに差があるからではないでしょうか。「たくさん売ろう」という気持ちだけでは足りません。「売れない自分に戻りたくない」という気持ち、「前の成績を超えたい」という気持ちが、どれだけあるかだと思います。

 たまたまラッキーで売れてしまった人は、それほど意識しないと思いますが、売れなかった経験のある人は、売れ出して周囲が注目してくれるようになると、その期待感がとても励みになります。これまで以上にやってやろうという気持ちになっていきます。

 ラッキーで売れた人は、売れても売れなくても仕事量は変わらないでしょう。その一方、私もそうでしたが、売れなかった人が「自分は売れる」と気づいたら仕事量をさらに増やしていくのです。こうなると「売れる人」ほど、仕事をするわけですから、ますます売れるようになります。それがまた、歓びにつながります。

 売れなかった辛い日々の中で、人並み以上の努力をしているのです。このような経験をしなければ、「どうして売れないのか」ということに気づけないものです。努力しない人は、自分のダメなところもわかりません。ダメなところがわかってくれば、そこを補う工夫ができます。そこで、また差がついてきます。

 売れるようになって、自分の限界がもっと高いところにあるとわかると、さらに「売れる自分」を目指すようになっていくのです。

「売れない自分」に戻りたくない

 新人の営業マンを見ていると、もともと接客能力の高い人が2割ぐらいいるものです。そうした人は、それほどの努力はしなくてもそこそこは売れます。売れない苦労をするのは、かなり後になってからになります。「そこそこ」では満足できなくなったときや、誰かに追い抜かれてから「もっと売りたい、売らなければ」と思うでしょう。

 ですが、そこから努力して追いつくのはなかなか大変なのです。売れなかった人は、売れるようになるまでの間、ずっとそれだけの苦労をしていたのです。その苦労の差を後から埋めていくのは、大変な努力が必要になるでしょう。

 私は「売れない自分」をいやというほど知っていますので、どうしてもそこには戻りたくありません。そのため、仕事はほかの人の3倍ぐらいやるつもりで取り組んできました。

 人間、安心し過ぎて、まったく不安がなくなると活動量が減ってしまうものです。少しくらい恐怖や不安があっていいのです。

 自分を追い込んでハングリーになることが、人並み以上の行動力を生み出します。「よし、やるぞ!」と、新たな気持ちでお客様に会いにいくこと。こうした意気込みは、件数、量の増加につながります。人よりも多くお客様に会うしかないのです。そのためにどうするかを考え、時間をつくってとにかく会うのです。