捕食者はプロファイラー
サイバー行動分析の領域において、私が行っている仕事の一つが、集められたデジタルの証拠に基づいてバーチャル・プロファイルを作成することだ。私はプロファイラーであり、オンライン上で起こりうる状況について想像をめぐらせているが、問題は「捕食者」の側もプロファイラーであるという点だ。
私は「捕食者(predator)」という言葉を使うとき、意味を小児性愛者に限定していない〔predator という英単語は、本来は肉食動物や天敵といった意味だが、最近は子どもを対象とした性犯罪者を指す言葉として使われることが多い〕。
それはほかの狙い(何らかの利益を得る、恐喝する、過激な政治的思想を植え付けるなど)を持った人物かもしれない。こうした捕食者たちはすべて、同じ手口で犯行に及ぶ。獲物を探し出し、信頼関係を築き上げ、それを利用するのである。
10歳の少年がオンラインゲームで遊んでいるとき、彼は大量の情報をサイバー空間へと流出させている。たとえその子が親の言いつけを守り、名前や年齢、その他の個人情報を見知らぬ人に伝えていなかったとしても、である。たとえば、ウェブカメラを使わずボイスチャットだけだったとしても、少年の声のトーンや高さ、言葉遣いから、年齢を把握できてしまう。またアクセントや方言からは、さらに多くの情報が引き出せる。
彼が親に邪魔されずに遊んでいられる時間の長さは、もう一つのヒントだ。彼は夜どのくらいの時間まで起きているだろうか?こうした情報から、少なくともインターネットに関して、彼の親がどのくらい厳しいのか、あるいは甘いのかを把握できる。
少年がプレーするパターンからは、彼の家庭の生活習慣がわかるだろう。夕飯の時間はいつか、週末は何をしているのか、親が寝る時間はいつか、といった具合だ。そこから彼が地球上のどこにいるのか、すなわちどこに住んでいるのかを推測できる。
捕食者はどんな情報も見過ごさないが、特に少年の家庭が子どもにどの程度の注意を払っているのかについては、敏感に感じ取る。ゲームに組み込まれたボイスチャット機能から、家庭内の情報が捕食者に筒抜けになってしまうのである。
捕食者が特定の少年と繰り返し遊ぶようになると、彼らはその子がどこに住んでいるのかわかるようになる。そして最終的に、その子がどの程度社会的に孤立しているのかも把握する。捕食者が少年の仲間たちの間に招き入れられるようになると、彼とよく遊ぶ子どもがいるかどうかわかるようになり、それも社会的な孤立度合いを測る重要なヒントになる。
孤独であればあるほど、その少年は脆弱な存在だ。さらにゲーム中、捕食者はわざと彼をプレッシャーがかかる状況へと追いやり、その反応から、少年の精神的な強さがどの程度かを判断する。簡単に動揺してしまうか?すぐにカッとなるか?無謀な行動をとるか? 捕食者はゲームを通じて、こうしたデータを収穫しているのだ。
そして少年が家に1人きりかどうか、あるいは親が出かけている可能性が高いのは1日のいつ頃かを判断する。ここで挙げたような情報はすべて、捕食者が子どもと1対1での会話を始める前から入手できてしまうものである。
幼い少年はプレーを褒められたり、手助けされたり、ずっと一緒のチームでいてほしいと言われたりすると、簡単に影響され、ゆっくりと相手のペースに引きずり込まれてしまう。