子ども同士ではなく、
オオカミたちとの危険な遊びかもしれない

 オンラインのマルチプレーヤー・ゲームでは、複数の捕食者が同じ獲物を狙うようになる場合があり、彼らは「オオカミの群れ」と呼ばれる。彼らは子どもの周囲でチャンスをうかがっている間、お互いに見知らぬ者同士のようなふりをするが、実際には相手をよく理解しているのだ。

 ふと外を見たら、自分の10歳の子どもが遊んでいるのが見えたとしよう。彼は2人か3人、あるいは4人の見知らぬ大人たちと一緒にいて、ボール遊びをしている。あなたはどうするだろうか?心配になって、様子を見に外に出ていかないだろうか?

 あるいは息子を家に呼び戻すか?この状況こそ、まさにオンライン上で起きていることなのだ。なのにあなたが心配にならないのは、息子がいるのはベッドルームだから、である。彼は静かにゲームをしている。彼は家にいる。彼は安全だ。そうでしょう?

 私はサイバー心理学者として、オンライン上で保護者による監視や権威の存在が感じられないことが、私たちが目にする多くの問題行動や、自己破壊的な行為に関係していると考えている。子どもや若者たちがオンライン上で見せる、数々のネガティブな行動の裏側にあるのが、このサイバー効果である。

 法執行機関は、オンラインゲームサイトの危険性を認識している。暴力的なマルチプレーヤーのシューティングゲームでは、プレーを続ける中で友情や忠誠心が醸成される。

 しかしサイバー環境が持つ力の一つは、人を騙し、欺く能力だ。そして脆弱な人々をなじみのないコミュニティへと引き寄せ、その中で認められたいという欲求を彼らの中に根付かせてしまう。

 子どもたちはネット上で見知らぬ人々と出会うだけでなく、オンライン脱抑制効果によって、現実世界では一度もしたことのない行動をするようになる可能性がある。

 8~12歳の子どもは特に、管理者のいない環境に対して脆弱な存在だ。彼らは自我の形成が始まったばかりである。彼らは家族や親から離れ、仲間との絆を深めるようになる。友人やクラスメートからの影響をより受けるようになるにつれ、この年齢層の子どもは、彼らに行動を合わせなければならないというプレッシャーを感じるようになる。

 そうした衝動は、あらゆる行動が増幅されるサイバー空間においてどのように働くのだろうか?そこでは物理的な姿はなくなるものの、仲間からの圧力はさらに巨大なものとなる。実際には存在しない圧力すら感じるようになってくるのだ。