射幸心をあおるCMとステマが
博打好きを増やしている?
ちきりん 宝くじのようなものは、どこの国でもありますよね。アメリカや南米なんて、最高当選金額は高額で、20億円とか当たりますし。ただ、アメリカも南米もそうですけど、基本的にまともな人は宝くじをやらない。ちょっと言葉は悪いですが、宝くじなんて「貧乏でアホな人がやるもの」という雰囲気です。
藤野 僕の尊敬する金融マンが「宝くじというのは愚か者に課せられる第二の税金である」と言っていました。本当にそうだと思いますね。
ちきりん 期待値とか確率とか、簡単なことがわかっていれば買わないですよね。でも日本では、高学歴で理屈もよくわかっているような人たちまで、こぞって宝くじを買うんですよね。それはマーケティングが上手いというか、広告の影響もあるのでしょうね。
藤野 そうですね。それはすごくあると思います。だって、宝くじにはほとんど広告の規制がないんです。僕らが「ひふみ投信を買ったら1億円になるかも」とか言ったら逮捕されるんだけど、宝くじは「コレを買って5億円!」とか言って射幸心あおって売っているじゃないですか。そういうあおり方をすれば、それなりに効果はありますよね。
ちきりん FX業界も宣伝が上手ですよね。FXのアフィリエイト広告ってすごく単価が高いんです。自分のブログでバナー広告をクリックさせて口座開設させると、一人あたり2000円とかもらえることもあるそうです。だからFXを全然やってない人でも、ブログではFXで儲かったような話を書いて、他の人がFXに関心をもつように仕向けていたりする。
藤野 それはステマ(ステルスマーケティング:消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をする)ってことですね!
ちきりん そうです。それでそういう情報を見て、大学も出て、堅実に専業主婦しているような人が、ご主人の稼いだお金を突っ込んでFXしたりする。前に堀江貴文さんが、「東証はFX市場に完全に負けている」ということをおっしゃっていたのですが、私も、まさにそうだなと思ったんですよね。実際にはFXで損したとか、破たんした人だってきっといっぱいるはずだと思うんですけど。
藤野 いるでしょうね。
ちきりん でもFX業界はすごくうまくて、それを全く表に出さない。失敗した人も本人はそのことを言わないですよね。ソンをしてもご主人にも秘密にしていたり(笑)。それで、一部の儲かった人の話だけが、宣伝活動に使われてる。
反対に、投資信託業界って宣伝が下手で、損した人の話ばかりが表に出てる。これじゃあ投資信託はFXに勝てないです。「毎月お小遣いが貰えます」で売った毎月分配型は上手かったけど、あれ以外では投資信託が全く魅力的に見えてないですから。
藤野 確かにそうですね。
ちきりん 日本人が短期的な一攫千金の方が好きで、産業を育てていくために自分のお金を投資していくという感覚が乏しいというのもその通りだと思うんですけど、株式投資の魅力とか、意義とかを、東証や株式関係者がきちんと伝えきれてないので、単に射幸心をあおるだけのFXとかに完敗しちゃうんじゃないでしょうか。藤野さんも投資教育に力を入れてらっしゃるということですけど、株式投資の陣営も、もう少し頑張って欲しいです。