世界初!3時間で
尿失禁の再生治療ができる

 排泄の問題と向き合う後藤医師の活動は多面的だ。

「排泄機能指導士」の養成と並行して取り組んできた、再生医療による腹圧性尿失禁の治療は、あと2年ほどで実用化できそうなところまできている。患者本人の脂肪組織から採取して抽出する「ADRCs(自己皮下脂肪組織由来再生幹細胞)を使う「尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)」の再生だ。

 多能性幹細胞は、人体のどのような細胞でも作りだせる能力を持つ細胞で、脂肪にはこの幹細胞が、骨髄の100倍以上も含まれているという。

 ちなみに「再生医療」と聞いて誰もが最初に思い浮かべるであろう「iPS細胞」は、人工的に作製した多能性幹細胞のこと。人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の因子を導入し、培養することによって、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力を持つ多能性幹細胞に変化させる。

 一方、後藤医師らが用いる脂肪由来の多能性幹細胞は、培養する必要がない。しかも、人体には大量の脂肪組織があり、採取方法も骨髄に比べて低侵襲(身体への負担が少ない)で容易だ。

「そこで我々は、患者さんの腹部から吸引採取した脂肪組織から、特殊な機器でADRCsを抽出し、尿道経由で尿道括約筋部に注入する治療法を開発しました。

 (1)患者さんの腹部から脂肪を取り出し、(2)専用のシステムで再生細胞(ADRCs)を抽出し、(3)尿道括約筋に注入する

 この一連の操作は3時間以内でできる上に、手術は注射だけで済みます。治療効果はじわじわと表れ、1年ぐらいで括約筋が再生し、血流が戻り、膀胱の収縮も正常化へ向かうのです」