公務員試験、会社内の昇進試験の受験者必読。

本連載では、元NHKアナウンサーの超人気講師で、毎年多数の小論文試験合格者を輩出する「ウェブ小論文塾」代表・今道琢也氏の新刊『落とされない小論文』から、内容の一部を特別掲載する。本番直前からでも、独力で合格水準まで到達するスキルと考え方をお伝えしていく。(構成:編集部)

「具体的に書け」と言われたら
何を書けばいいのか?

「具体的な言葉で書きなさい」とは、よく言われることです。たいていの小論文の指導本に書いてありますし、小論文の指導を受けたことのある人ならば、一度は言われたことがあるでしょう。

それにもかかわらず、なぜ、多くの受験生がこのミスを犯してしまうのか。

それは、「どう書けば具体的になるのか?」を知らないからです。
もっと言うと、指導する側が「どう書けば具体的と言えるのか?」を教えていないからです。
さらに言えば、「なぜ具体的な言葉で書かなくてはならないか?」ということまで教えられていないからです。

このミスは、先日の記事『受験生の50%以上が「問題の意味を理解していない」という大問題』
と同じように、あらゆる小論文試験、あらゆる受験者に共通して見られる傾向です。

いくつかの具体例で、原因と対策を説明していきましょう。


【公務員試験の想定問題】
行政と住民との連携をどう進めていくか、考えを述べなさい。

【低評価の解答例(1)】
行政の仕事において住民との連携は不可欠であり、積極的に取り組む必要がある。まず、住民の声を少しでも多く政策に反映し、住民のための、暮らしに密着した市政を実現していくべきだ。また住民の声を聞くだけでなく、市政の情報も住民と共有し、住民との距離を縮めていかなければならない。さらに、市の現状を俯瞰し、財的、人的資源が限られる中でも、住民と協力し合い一体となって市の課題を解決するなど、今後住民との連携を一層深めていくことが大切である。(以上)

【高評価の解答例(1)】
行政の仕事において住民との連携は不可欠であり、積極的に取り組む必要がある。例えば、定期的なタウンミーティングの開催や住民アンケートの実施により、住民の声を聞きとり政策に反映していくべきだ。また住民の声を聞くだけでなく、市の広報誌やサイトなどを通して市政に関する情報を積極的に発信し、住民との距離を縮めていかなければならない。さらに、市の財的、人的資源が限られるなか、例えば高齢者の見守り事業をボランティアやNPO団体と協力して行うなど、住民との連携を一層深めていくことが大切である。(以上)

【昇進試験の想定問題】
職場のコミュニケーションを活発にするためにどのように取り組むか、述べなさい。

【低評価の解答例(2)】
職場のコミュニケーションを活発にすることは業務を遂行する上で不可欠であり、私はマネージャーとして積極的に取り組んでいきたい。職場の人たちに対して、私から日々積極的に声掛けを実行していきたい。小さなことでも相談し、報告しあうことで、連絡を密に取り合える状態を作り、仲間と強い信頼関係を作り上げていきたい。正社員のみならず外部スタッフともコミュニケーションをとって風通しの良い職場を作り、職場を大いに活性化していく所存である。

【高評価の解答例(2)】
職場のコミュニケーションを活発にすることは業務を遂行する上で不可欠であり、私はマネージャーとして積極的に取り組んでいきたい。まず、週に一度ミーティングを開き、各自の仕事の進捗状況や課題を共有できる場を作ることを実行する。また、日常的に仕事上の報告、連絡を密に行うことを呼びかけ、特にトラブルが起きた際には速やかな報告を励行する。このほか、正社員、外部スタッフ問わず、出勤時や帰宅時にはこちらから進んで挨拶し、何でも気さくに相談してもらえるような関係を築いていく。こうした行動の積み重ねで職場のコミュニケーションを活発にしていきたい。(以上)

さて、2つの「低評価の解答例」のどこに問題があるか、気づいたでしょうか?

「抽象的な文章」を具体的にする4つのポイント

「数字」「事実」「固有名詞」
「見たこと・聞いたこと」を入れる

2つの「低評価の解答例」に共通する問題点は、話が漠然としているということに尽きます。

低評価の解答例(1)で言えば、「住民の声を少しでも多く政策に反映し」とはどう反映するのか、「市政の情報も住民と共有し」とはどう共有するのか、具体的な状況が頭に浮かびません

低評価の解答例(2)でも、「連絡を密に取り合える状態」とはどんな状態なのか、「風通しの良い職場」とはどんな職場なのか、イメージできないため、読み手に非常に空疎なイメージを与えます

抽象的な文章には、説得力がありません。説得力がない小論文は、間違いなく大幅に減点されます。

では、具体的に書くためには、何をどう変えればよいのでしょうか?

わかりやすくするため、小論文を離れて考えてみます。私の故郷は大分県なので、「全国の人々に大分の良さが伝わるような文章」を例にします。

【問題】
大分県の魅力はどのようなところか、あなたの考えを述べなさい。

【解答例1】
大分県を訪れた人々は、本当に素晴らしい場所だと誰もが心から喜んでくれます。文化、歴史、食べ物、美しい自然の風景どれをとっても、ここでしか味わえない魅力にあふれています。最近は海外からのお客様も多く、日本人だけなく世界中の人びとにも満足してもらえる、心からお勧めできる場所です。

【解答例2】
大分県の一番の魅力は温泉です。別府、湯布院には三千以上の源泉があり、肌に優しい泉質で美肌効果も十分、別府湾の夜景を一望できる温泉もあります。また、たっぷりな肉汁と柔らかな食感の豊後牛のステーキ、ぷりぷりの車エビの刺身など、おいしいものをたくさん味わえます。

解答例1は、言葉に力は入っていますが、大分県の魅力がどこにあるのか、何ひとつ伝わりません。

一方、解答例2は、大げさな言葉は1つも使っていませんが、すぐに頭にイメージが浮かぶはずです。解答例2のほうが字数は短いにもかかわらずです。「本当に素晴らしい」「ここでしか味わえない」のような抽象的な言葉を100個並べるより、1つの具体的な事実を書いたほうが、はっきり伝わるのです。

小論文は、自分の主張を「なるほど」と相手に納得してもらうための文章です。「具体的に言うとどういうこと?」と疑問を持たせてしまったら、致命傷になります。

具体的に書くためには、事実、固有名詞、数字を入れる、視覚、聴覚、触覚、味覚などに訴える描写をするのがポイントです。解答例2で言えば「別府」「湯布院」「三千以上の源泉」「肌に優しい泉質」「夜景を一望できる」「たっぷりな肉汁」「豊後牛のステーキ」「車エビの刺身」などがそれに当たります。「読み手の頭にイメージがすぐに浮かぶように書く」のです。

なお、前出の高評価の解答例(1)には、「積極的に取り組む」「連携を一層深めていく」などの抽象的な言葉がありますが、これらは具体的に説明した内容の「まとめ」の役割を果たしますから、問題ありません。話のメインとなる内容を、抽象的な言葉で書いてはいけないということです。

『落とされない小論文』では、このほか、小論文試験に一発合格する必要最低限の情報を凝縮して伝えています。ぜひ、直前対策に使い倒してください。