エンタテインメントロボットに人間が驚いたり感動したりするのは、ロボットが自律的に判断し、人間の予想外の反応をしてくれるときである。

産業用ロボットも今や
単なる「ロボコップ型」ではダメ

欧米とは真逆な日本の「ロボット観」が生産性革命で見直される理由ABBが開発している協働型双腕ロボット(Photo:ABB)

 しかし最新の産業用ロボットは、従来のように、ただ命令に服従するだけのロボットではなくなってきたようだ。スイスに本社を置くABBは、発電所設備や産業用ロボット、最近では、電気自動車の充電設備などの開発製造を手がける大手産業用機器メーカーである。ABBは、世界初の商業用ロボットを発売した産業用ロボットの草分け的企業であるが、同社は協働型双腕ロボットという新しい産業用ロボットを開発している。

 人間と同じ2本の腕を持つこのロボットは、人間の手作業との協働を前提に設計されている。単純な反復作業であればロボットだけで行えばいいが、臨機応変な対応、人間の認知能力や洞察力が求められる場合には、人間の手を借り、協働するというものだ。

 双腕協働型ロボットが人間に似ているのは、2本の腕だけではない。作業現場の状況を自ら臨機応変に判断する高度なAIが搭載されている。機械だけが存在する現場では、単に正確に素早く作業をこなすだけでいいが、同じ現場に人間の手が入るということは、その人間の身体の安全を確保しなければならないということである。

 人間の手の動きは必ずしも規則的ではないから、ロボットの方が人間の動きに合わせて、危険がないように動く必要がある。協働型ロボットにAI技術が求められる所以だ。

 産業用ロボットもただ命令に従うのではなく、自律して臨機応変に判断をする能力を持つということは、ロボットを人間の相棒、仲間として認識するというロボット観の大きな転機になるのかもしれない。その意味で、産業用ロボットも欧米的ロボット観から、日本的ロボット観にシフトしてきていると言えるかもしれない。

 先述のABBは、同じ協働型ロボットを推進している川崎重工業と昨秋、協働型ロボット分野における協業を発表しているが、これも欧米的ロボット観と日本的ロボット観の新たな出合いなのかもしれない。

(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 長内 厚)