ツイッターは投稿削除やアカウント凍結を安易にしない

 しかし、その規模と範囲と影響力は、当初のジャック・ドーシーの想定を大きく上回る状況となってしまった。

 2016年の米国大統領選では、ソーシャルデータ分析が明らかにしたように、投稿されたツイートなどの内容の質にかかわらず、投稿数とその投稿のリーチ数がリニアに候補者の支持率に影響するという「any press is good press」を地でいく事態が観測された。

 そして、ロシアが選挙介入を目的としてツイッターとフェイスブック上に偽情報を流すアカウントを複数作成し、社会的分断を強めるような広告を掲載していたという事実を、選挙から1年が過ぎた2017年9月、両社は立て続けに発表した。

 さらには、翌10月には、同じく2016年の英国のEU離脱を決めた国民投票で、ロシア政府とのつながりが疑われるツイッターの多数のアカウントが離脱を支持する投稿を繰り返していたとの報道が英ガーディアン紙によってなされた。

 かつて、ツイッターが「Global Town Square」としてのパワーを発揮してアラブの春を引き起こしたように、反体制派でプロパガンダに使おうと思う者がいるのは不思議ではないし、当然の成り行きだが、これもまたジャック・ドーシーにとっては、想定外の出来事だったであろう。

 こうした状況に対して、ツイッターは、2016年の選挙期間中については、選挙に影響を与えるようなツイートを大量に削除していたことを明らかにするとともに、サービスの健全性確保のため、不審なアカウントを補捉したり、悪質なbotに対処したりするためのツールを開発し、現在は世界で週当たり320万件の不審なアカウントや、1日当たり45万件以上の不審なログインを捕捉するなどしているという。

 しかし、ツイッターは安易に投稿を削除したり、アカウントを凍結するなどの対応をとることはしない。

 2017年11月、ツイッターを退社するカスタマーサポート担当従業員が最終出社日にドナルド・トランプ米大統領のアカウントを失効させ、無効にさせるという事件があった際も、ツイッターは11分で復活させた上で、この事実を公開した。

 実はトランプ大統領のツイッターアカウントについては特定の個人を攻撃するツイートを頻繁に行うため、ツイッター自身が定めたガイドラインに則り、アカウントを停止すべきだという意見もある。