ビジネスとして成立するから、コミッショナーの権威も高いのだ。これは日本の学生アメフト連盟がほぼボランティアで成立していることと対照的だ。

米国の場合、選手も特定のスポーツ以外に
生きる道がないと追い込まれることはない

 もちろん、お金が発生するがためにルールがつくられることだけが、指導者の暴走の歯止めになっているわけではない。興味深いのは著者が米国では一流選手でも複数のスポーツを経験することや普通に勉学に励んでいる点を重視していることだ。結果的に選手も特定のスポーツ以外には生きる道がないと追い込まれることがなくなる。他のスポーツに比べておかしな指導者がいれば「あいつ、やばくない?」と声をあげやすくなるわけで、危ない指導者が淘汰されることにもなる。

「学生スポーツを金儲けにするのか」、「日本人はアメリカ人に比べて規律を守る」、「性悪説に立つのはおかしい」との意見もあるだろう。本書もルールの厳格化はアメリカ人のいい加減さの裏返しとも指摘している。ただ、あるのかないのかわからない指導者の良心に委ねていては、暴走の抑止力にはなりえないことが悲しいかな、今回、明るみになった。アメリカを真似る必要はないが、本書を読むことで、スポーツに励む学生をタコつぼの中に押し込んでいる枠組みをどう変えるのかといった視点が必要なことを誰もが認識するだろう。

日大アメフト事件が米大学スポーツでは起こり得ない理由

(HONZ 栗下直也)