「い・ろ・は・す」ブランドの戦略的な“挑戦”と“落とし穴”

これまでお話ししてきた文脈で考えた場合、「透明」でさえあれば、フレーバーはどこまでも拡張していけることになります。スイーツ系であれ、ジャンク系であれ、フレーバーウォーター愛飲者が美味しいと感じる味ならOKということです。
メロンクリームソーダは、かなりチャレンジングなフレーバーですが、はたして愛飲者に受け入れられるでしょうか。注目です。

その一方で、どこまでもフレーバーを拡張していくと、「水(ミネラルウォーター)」ブランドとしてのアイデンティティを損ねるのではないか、という問題が出てきます。
「水(フレーバーなし)」を飲む人たちは、フレーバーウォーターをあまり飲まないため、『もはや、「い・ろ・は・す」は水のブランドじゃない。ジュースだよね』と思うときが来るかもしれないというリスクです。

水ユーザーから、いったんジュースと思われてしまうと何が起きるか。
まず考えられるリスクは、「い・ろ・は・す」の基盤製品である「水」の売上が下がることでしょう。派生製品であるフレーバーの売上がいくら伸びても、ブランドの基盤をなす「水」が落ちてくれば、ブランドは確実に弱体化します。
(フリスクでいえば、基盤製品は「ミント」。ハーゲンダッツでいえば「バニラ」。どれだけフレーバーを増やし、派生製品が多くなっても、ブランドの価値をもっとも体現した基盤製品の売上を大事に維持するブランドは、長期にわたって成功します。)

そして、「い・ろ・は・す」が人々からジュースブランドと思われてしまうと、次第にフレーバーウォーター愛飲者も離れていく危険性が出てきます。まわりの人から「水」と見られていたからこそ、オフィスなど人前で堂々と飲めていたものが、「ジュース」と見られてしまうと飲みにくくなってしまうからです。

メロンクリームソーダは、フレーバーウォーター愛飲者で受け入れられ、さらに市場を拡大していくことができるかどうかの試金石になるとともに、愛飲者以外の人々からはどう受け止められ、「い・ろ・は・す」のブランドイメージはどう変わるのか、ブランドアイデンティティをどう維持していくのか、というブランドの試金石ともなります。

メロンクリームソーダは、フレーバーウォーターの未来、「い・ろ・は・す」の未来を占う上で、とても戦略的な意味をもった、注目すべき商品なのです。

このように、戦略的にインサイトをとらえることが、製品開発やブランド育成の大事なカギとなります。成功確率を高めるために、また、落とし穴にはまらないために、インサイトをどう見つけ、どう活用していくのか。その取り組み方を詳しくお知りになりたい方は、ぜひ「戦略インサイト」をご一読ください。