キープヤング

朝倉:大企業を含めて、すべての企業はもともとスタートアップですが、ずっとそのスピリットを維持するのは難しいことです。そうした中で、リクルートが創業から50年以上経った今でも飛び抜けて若い雰囲気を保っていられるのはなぜでしょうか?

福田:色々あるでしょうが、社内の風通しを良くするための風土が根付いています。たとえば昔から、社員の呼称を「さん」付けで呼ぶといった習慣が染みついています。昔からそういう風通しの良い環境で事業なり組織なりを大きくしてきたので、全体の風土として根付いたんじゃないかと思います。他の企業でも職位ではなく「さん」付けにしようという動きは何度か流行があったと思いますが、むしろ改めて「さん」付けにすると決めなくてはならないことに違和感があります。こうした風土は、本来は自然発生的にボトムアップで生まれるべきものではないでしょうか。

朝倉:たしかにそうですね。考えてみれば、マッキンゼーでもパートナーだろうが新入社員だろうが、基本は「さん」付けでした。

福田:また、組織の若さを保つ「キープヤング」という考え方がすごく大きいのではないでしょうか。常に新陳代謝ができる仕組みはすごく重要だと思います。
今の峰岸真澄社長は、48歳で社長に就任しました。その前の柏木斉さんも45歳で社長に就任し、54歳で辞めています。こうして、社長がどんどん代替わりし、また変わるごとに若返っていく。そして役員クラスにも、常に若い人たちが名を連ねている。そうした仕組みの影響が大きいんじゃないかと思います。
事業系の多くも、ボトムアップで生まれていました。リクルートの歴史というのは、新しいものを立ち上げてきた歴史ですが、いわゆるトップダウンで始めた回線事業や、不動産事業、金融事業などは、結局失敗してしまっていますよね。それ以外はすべて現場発です。リクルートというのは、現場からアイデアを吸い上げる仕組みや、ものごとを現場で考えるという姿勢が、ずっと定着しています。