竹内流・研究資金の獲得術

ちきりん  大学の先生方の資金集めって、どうなっているんでしょうか。

竹内  大学では科研費が有名ですよね。正式には科学研究費補助金という名前なんですが、これは文部科学省から出ている資金なので、応用研究にはあまり振り向けられていません。これが基礎研究者の大きな資金源になっています。

 経産省とか総務省のような補助金の場合には、それぞれの省庁の政策に直結した研究でないと、なかなかもらえません。産業振興のための資金ですから。総務省だったら通信関係の研究、経産省だったらエレクトロニクスとか、エネルギー分野などですね。私の場合には文科省以外でも資金を得られるし、いい技術だったら企業と組んで共同研究という形で企業からお金を引き出すこともできます。ところが、基礎研究関係の場合、そういうことができないから、文科省一本なんです。だから、科研費は優先的に彼らが獲得していくように見えます。

ちきりん  なるほど。科研費に対する熱意が全然違うわけですね。

竹内  私も伝聞ですが、まるで違うそうです。科研費に限らないことですが、ロビー活動もすごいと文科省系の人も言っていましたけれど、しょっちゅう来て、なんとかしてくれ、なんとかしてくれと。ただ、それも最近少し風向きが変わってきたように思います。 

ちきりん  どう変わってきたのですか。

竹内  民主党の仕分けなどで全体のパイが減ってきていますよね。そんなときに、実際に役に立つかどうかわからない分野に資金を出すようなことでいいのか、ということのようです。その意味では、私にとっては追い風です。最近では、文科省でも研究成果を実用化する企業を連れてこいと言うんですよ。大学単独での提案は認めない、企業にもお金を出させろと。経産省系のお金をもらうときは、企業と大学の共同研究なんですが、だいたい2分の1くらいの助成なんです。つまり、残り2分の1は自己負担になるのですが、大学には自己資金がありませんので、企業に出してもらうことになる。

 つまり、大学の研究室がお金をもらう場合でも、企業に対して国家プロジェクトというめんどうなことに参加してもらい、こっちの食い扶持まで企業にもってもらい、さらに役所にアタマを下げるまでやっておかないともらえない。実は、このようなマネジメントというか、スキームづくり、ビジネス・ディベロプメントができないと、大学の先生も資金をもらえないですね。

ちきりん  アタマを下げたくない先生もいるでしょうし、経験不足でやり方がわからないだけの人もいるかもしれませんね。