理不尽な親会社の要求は突っぱねろ
長年継続してきた下請事業を抜本的に見直すためには、仕事が大幅に減ることを覚悟しないといけません。
私も兄(社長)も弟(専務)も、覚悟しました。
下流工程を請け負うのではなく、企画立案や図面作成などの上流工程までを担い、クライアントをサポートする。そのために「非下請化」=「完全自立化」へ舵を切る。
親会社に「生かされている」のではなく、強い覚悟を持って「自分たちで生きる」選択をしたのです。
ヒルトップが現在、リスクを負って、宇宙や医療やロボットといった新ジャンルへ積極的に参入しているのも、加工製造だけでなく、デザイン、マーケティング、コンサルティングまで職種を広げているのも、すべて自社の付加価値を高める(=自立する)ためです。
私は、親会社(取引先)の顔色を窺ったことはありません。
一方的なコストダウンや、上から目線の根拠なき要請には一切従いません。
私がまだ20代の頃、売上の6割を占めるA社から一方的にミスをなすりつけられました。
しかし、実際にミスをしたのは取引先の担当者です。
断じて私たちではない。
なのに担当者は、電話口で「おまえが悪い」と責任を押しつけてきたのです。
「おまえ!」と呼ばれた瞬間、私の頭の中にあったヒューズがブチッと飛び、
「今からそっちに行くから、待っとれ!!」
と声を荒げていました。
A社との取引中止は覚悟の上です。
翌日には、「山本がなんかやりよった」と、業界内の噂になっていました。
また、これとは異なる時期に、売上が5割を占めるB社に乗り込んでいったこともあります。
期日をすぎてもB社からの振込がないので、
「どうなっていますか?」
と問い合わせると、
「不良品があったから、お金は払われへん」
という返事でした。
私が、
「すべての製品に不良品があったわけではありませんよね?」
と尋ねても、聞く耳を持ってもらえない。
「それはおかしい」
と直談判したのですが、相手にしてもらえない。
この件も業界で噂になりました。
「山本がまたやりおった。山本精工はやくざみたいな会社や」と。
「どっちが悪いねん」と思いましたが、たとえそう言われても、「親会社の言いなりにはならない」という気概だけは当時からあった気がします。
結局、A社もB社もお金はお支払いいただきましたが、その後の取引はやめました。
今回、年間2000人の見学者が訪れる、鉄工所なのに鉄工所らしくない「HILLTOP」の本社屋や工場、社内の雰囲気を初めて公開しました。ピンクの本社屋、オレンジのエレベータ、カフェテリア風の社員食堂など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事をご覧いただければと思います。