中国では喫煙が関係する疾患で1日3000人が死亡しており、受動喫煙の被害者はすでに7億4000万人に達していて、受動喫煙で亡くなる人は年間約10万人との統計がある。

 上海や北京をはじめ、中国18の都市で「屋内全面禁煙」の法律が施行。また、病院、児童施設、文化保護地域では屋外禁煙と定めた。

 それにもかかわらず、膨大な喫煙人口がいる中で、あまり反発の声が上がってこない。そして、喫煙者にはストレスがあるように見えないのだが、なぜだろうか。

 それは、上述以外の場所であれば、路上で“吸い放題”となっているからだ。筆者は出張などで中国へ行くたびに、いつもたばこの臭いを感じながら道を歩いている。つまり、一歩外へでれば、自然と受動喫煙の被害を受ける身となるのだ。

中国ではたばこは重要な「社交の道具」
初対面では「たばこを交わす」

 実は、2005年にも中国政府が全国範囲の「禁煙令」を定めた。その後各地の地方政府も、独自でそれぞれ内容の違う禁煙条例を発表した。ところが十数年たってもそれらの効果は見られない。一部の専門家は「政府の監督と管理の怠慢だから」とか、「政府とたばこ業界の癒着である」などと指摘するが、一番大きな原因は中国の独特な「たばこ文化」が根深く、「生活のスタイル」として定着しているからだ。

 まず、中国では、たばこは重要な“社交の道具”である。

 初めて会った人とは、たばこを勧め合うところから始まる。そして、お互いに火をつけてあげてから、話の本題に入る。初対面でお互いの緊張を解消する「アイスブレーク」として、たばこは重要な存在になっているのだ(ひと昔の日本もそうだったと聞いているが…)。

 中国語の中でも、たばこで人間関係を表現することが多い。例えば、「敬煙」(敬意を持ってたばこを勧める)、「以煙待客」(たばこで客をもてなす)、「煙酒不分家」(たばこやお酒があれば他人ではなくなる)など、いずれもたばこが人間関係で重要な役割を果たしていることの証である。

 現在の中国の大都会では状況は少し変わってきたが、地方へ行くと人が集まる席では、いまだにお互いにたばこを勧めるのが礼儀である。そればかりか、たばこを吸わない男性は「あなた、それでも男なのか」と見下されるも珍しくなく、人格まで否定されそうな雰囲気だ。