さらに、保育所には温かい料理を提供する調理室の設置を義務づけるだけでなく、食事やおやつの調理についても、保育所で実施するよう規制していました。今は、部分的に規制が緩和されましたが、規制の必要性について、厚生労働省は当時、「温かい家庭的な雰囲気の下での食事提供が、恒常的安定的に確保されている必要がある」と説明していました。

 ここでのポイントは「温かい家庭の雰囲気」であり、「保育に欠けるもの」に対して家庭のような料理を提供することに意味があると言っていたわけです。

保育所は福祉
幼稚園は教育

 こうした制度の考え方は、幼稚園との違いにも反映しています。幼稚園と保育所は就学前の子どもを受け入れている点で共通しているにもかかわらず、保育所を厚生労働省、幼稚園を文部科学省がそれぞれ担当していたこともあり、制度の整合性が取れていませんでした。さらに、それぞれの団体が支持する自民党議員が異なっていたため、一部では「役人や政治家が権限や利権を手放したがらない」といった言説も聞かれました。

 しかし、あくまでも幼稚園の目的は教育なので、「家庭的な雰囲気」を再現するというよりも、教育に力点を置いています。このため、幼稚園には調理室の代わりに、運動場の設置が義務づけられており、「保育に欠けるもの」を支援していた保育とは制度の原則を異にしました。

 これが縦割りを生んだ根本的な原因です。後述する通り、近年はさまざまな制度改正が進められており、縦割り行政の弊害は少しずつ解消されていますが、縦割り行政の歴史は、戦前にさかのぼるのですから驚きです。まず、幼稚園については、1926年に「幼稚園令」が制定されたことで、制度として明確に位置づけられます。