読書がいかにも、勉強ができる子の代名詞のように使われています。しかし、読書が勉強に役立っているかは、「読み方」が大事だと言うことを忘れてはいけません。その読み方をお伝えします。
46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』がいよいよ発売。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場でできることではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。
本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。

「読書好き」と「書くのが上手」は、=(イコール)ではない

「うちの子は読書がとても好きなんですよ」と、自慢するかのようにおっしゃるお母さんはたくさんいます。

 文章を読むということは勉強の基礎になりますから、本だって読まないよりも読んだほうがいいことには間違いありません。

 ただ、世の中でいわれているほど、読書が勉強のためになるのかと問われると、私は少々疑問に感じます。

 私は幼少の頃、あまり本を読む子どもではありませんでした。熱心に読むようになったのは小学6年生くらいからだったかと思います。松本清張、高木彬光、江戸川乱歩などの推理小説を主に読んでいました。

 特に好きだったのは松本清張です。社会悪をえぐり出すような硬派な作品が多く、子どもが好んで読むような内容ではありません。でも止められることはなかったので、自由に読むことができました。

 ですから子どもの頃に読書をたくさんしていた時期はあったのですが、それが結果的に勉強に役立ったかというと、自信はありません。

 今振り返れば、話の筋を追ってハラハラドキドキしながら楽しんでいただけではなかったか、そんな気もしてしまうからです。

 子どもが好んでする読書は、小説や物語などのストーリーものが大半です。話の展開が面白いので夢中になって読んでしまいますが、それは結局、テレビを見ているのとあまり変わりませんよね。

 作り手がつくったストーリーを、受け身になってなぞっているだけだからです。

 テレビは受動的、本は能動的なメディアという意見もありますが、果たしてそうでしょうか。

 読んでいる途中に本を閉じて、主人公の心情をじっくりと考えてみる……などということをする人は少ないのではないでしょうか。結局、本も受動的に読んでしまうことが多いのです。

 前回、お伝えした通り、人間にとって大切な「生きるために必要な力」とは、「考える力」と「書く力」でしたね。「読む力」は「考える力」と「書く力」を支える基礎の部分でしかありません。

 小説などを夢中になって読むだけでは「考える力」「書く力」にはつながりません。

 そこで私がおすすめしたいのは、作家の立場になって読書をすることです。小説を読む際も、小説家がどのようなことを伝えたいのか、どんな背景があって物語を書いているのか、考えながら読むことです。

 その場合、同じ作家の作品をいくつも読んだほうが、背景をより思い浮かべやすくなると思います。作家の視点で本を読むことは、「考える力」につながるといえるでしょう。

 また、資料としての読書を行うこともおすすめします。

 私は最近では、歴史書をよく読んでいます。歴史上の人物について解説した資料や学問書です。歴史を知れば、現代にも生かせるさまざまな知恵を得ることができます。

 この場合、本を読むだけでなく、テレビを見て情報を得ることもあります。つまり歴史が好きな場合、その知識を得るための手段として活字や映像を利用しているということです。とりわけ、Eテレの日本史関連の番組は面白いですよ。

 特定のジャンルに興味を持ち、自分なりに探求するということは、「考える力」を養うのに役立ちます。

 他の子どもとは違った、オリジナリティある考え方ができるようにもなり、それは「書く力」にも生かされていくのです。

【POINT】

作家の立場になって本を読むことで、
考える力、書く力につながっていく。